テイスティング会では、いつものように各国の赤、白、スパークリング計10種類以上のワインと合わせていきました。「これにはこのワインが合いそうだな」という予想がはずれたり、10名程のメンバーの中で意見が分かれる事もしばしば。でも今回は期待通り、同郷スペインの個性豊かな2本の赤ワインが選ばれました。
まずはスペイン北部、銘譲地リオハの「ソラール ビエホ クリアンサ」。黒ブドウ品種テンプラニーリョ100%で造られます。リオハで造られるワインの70%がテンプラニーリョを使用しており、まさにリオハを代表する品種です。「ソラール ビエホ」は1937年からワインを造り続けてきた名門ワイナリーの1つで、テンプラニーリョを知り尽くしたワイン造りで定評があります。女性醸造家ヴァネッサ インサウスティさんはこの品種について「私たち醸造家がワインに求めるすべてが揃っている。新鮮さ、果実味、優雅さ、しっかりしたストラクチャー」と表現しています。伝統的にリオハでは長期間樽熟成させ、樽のニュアンスのしっかりとしたワインが造られてきました。ですが「ソラール ビエホ」のこだわりはブドウの果実と樽の絶妙なバランス。テンプラニーリョの凝縮した果実のなめらかな味わいを出しながら、定期的な樽の洗浄をすることで、クリーンな味わいに仕上げた、新しいリオハワインです。
チーズとワインをあわせると、ワインの豊かなベリー系の果実とアメリカンオーク樽由来のバニラのような複雑なニュアンスが、マンチェゴのはちみつのような濃厚な甘みと真っ正面から重なり合います。重厚感のあるこのワインにチーズが押される事はなく、後から羊乳のコクがグイグイ出て来て余韻を長く楽しめるのは、マンチェゴが骨格の太いチーズだからこそ。最後にワインのナッツのような香ばしさがほんのり漂います。まさに現地の熱気溢れるバルの中で食べる雰囲気が感じられるような、力強い組み合わせです。
そしてもう1つは、こちらもスペインの「フレシネ ミーア 赤」。Mia(ミーア)とは、スペイン語で“わたしのもの”という意味。女性醸造家グロリア コレルさんの「飲む人全てにとって“私の定番=ミーア”になって欲しい」という思いから生まれました。こちらはあえて樽熟成を行わず、ブドウ畑でブドウをかじったときのような瑞々しさが魅力。豊潤でありながら甘やかなフルーティさは、これからワインの世界の扉を開く人にもぴったりの1本です。深みのあるチェリーやプラムのような豊かな香りと濃厚な果実味。熟した果実のふくよかさや柔らかさが、やや無骨なマンチェゴを包み込み、マイルドに変化します。羊乳チーズ初心者の方にも気軽に試して頂きたい、カジュアルに楽しめる組み合わせです。
情熱の国を照らす太陽のように今熱いスペインのワインたち。この秋は「ヌエバ エスパーニャ」で食欲の秋をお愉しみ下さい。