“ありがとう”の乾杯を盛り上げる、白カビチーズの王者
今年もボジョレー ヌーヴォーの季節がやってきました!
ボジョレー ヌーヴォーとはその名の通り、ボジョレー地区で収穫したブドウを、その年のうちに仕上げた新酒(ヌーヴォー)のことを指し、毎年11月第3木曜日に解禁されます。もともとヌーヴォーは、ブドウの収穫に感謝し、お祝いをするとともに、ブドウの出来を確かめるためにつくられたとも言われています。その年の太陽と大地の恵みを一番に味わう、今月はそんな特別な1杯に合わせたいチーズをご紹介します。
1つの村に1つのチーズと言われるフランス。そんなチーズ大国の歴代の王様に愛された「王様のチーズ」であり、フランスが誇る白カビチーズの王者「ブリ ド モー」の1つ、「ブリ ド モー フェルミエ ロートシルト」です。
「ブリ」の原産地はパリの東側、セーヌ・エ・マルヌ県。肥沃な粘土質の土地が牧場に適し、大小さまざまな白カビチーズが生まれ、かつての地方名であった「ブリ」がそのままこの土地で作られる白カビチーズの総称となりました。「ブリ」の中でも、モー市で生まれた「ブリ」のことを「ブリ ド モー」と言います。
「ブリ ド モー」は他の多くのチーズと同様に、第2次世界大戦前までは「フェルミエ=農家製」が中心でした。しかし、1980年にAOC(※)を獲得してからは需要量が飛躍的に上昇。その需要量を賄うためにより大量のミルク、つまり広大な土地が必要となりました。また、同時に近代化が進み、大手の買収により数多くいた小さな生産者たちは姿を消し、その後ついに農家製「ブリ ド モー」は消滅してしまいました。しかしここで救世主となったのがエドモン ド ロートシルト家です。セーヌ・エ・マルヌ県に所有する広大な森の中の農場で1996年から「ブリ ド モー」の製造を開始し、「ブリ ド モー フェルミエ ロートシルト」として、農家製「ブリ ド モー」を復活させたのです。現在、農家製「ブリ ド モー」を作るのはここ1軒のみ、まさに唯一無二のチーズなのです。
上質なミルクをゆっくりと発酵させ、手作業でじっくりと仕上げられるその表面には、熟成時に敷かれる葦の模様が残っています。エレガントな中に存在する力強さ、キノコや藁が混ざり合ったような複雑な芳香。他の「ブリ ド モー」とは明らかに一線を画した奥深い味わいです。
※AOC:フランスの農業製品(チーズ、バターなど)に対して与えられる認証であり、特定の条件を満たした製品にのみ付与される品質保証のこと。2009年からはヨーロッパの品質認証制度に準拠し、AOPと表記されるようになった。