コート・ドール 黄金の丘から生まれた至高のマリアージュ
世界のワイン通を唸らせる銘譲畑が連なるブルゴーニュ コート・ドール県。この地に、フランスの名だたる美食家たちをして“神のチーズ”と言わしめる、秘蔵のチーズがあることをご存知でしょうか。
“コート・ドール=黄金の丘”。ブルゴーニュ地方を南北に細長く縦断し、北部コート・ド・ニュイ地区と南部コート・ド・ボーヌ地区を内包するこの一帯は、秋、ブドウの収穫を終えて紅葉を迎える頃、太陽に照らされたブドウの丘が黄金色に光り輝くことからこの名で呼ばれます。また、グラン クリュ(特級畑)の丘がつながり、まさに黄金を生み出すということも、名前の由来になっているようです。
そのコート・ド・ニュイ地区、ニュイ・サン・ジョルジュ村の程近くに、中世から続く“アベイ ド シトー=シトー派修道院”が佇んでいます。1098年に創設されたこの修道院では、20世紀初頭から今も変わらずあるチーズを作り続けています。その名も修道院と同じ「アベイ ド シトー」。修道士たちの手により、生産から熟成まで一貫して修道院の敷地内で行われています。長い間現地での消費分しか生産されていなかったため、その人気に供給が追いつかず、日本はおろかパリで出会うのも困難なチーズでした。しかし生産体制が整えられ、昨年よりやっと日本にも安定して入荷されるようになりました。塩水で洗われた表皮はうっすらとオレンジ色に色づき、むっちりと弾力のある生地はクリーム色。天使のほっぺたを思わせる、柔らかくまろやかな口溶けです。ウォッシュタイプ独特のやや強い香りとは裏腹に、良質なミルク由来の雑味の無い優しい味わいで、はちみつのような凝縮したコクが長く続きます。「アベイ ド シトー」の包み紙の中央には「PRIÈRE&TRAVAIL」というシトー派修道院の標語が印字されています。日本語に訳すと「祈りと労働」。その言葉の通り、敬虔で勤勉な修道士たちにより守り続けられてきたこのチーズは、フランスのチーズ愛好者からしばしば「divin 神々しい」と最上級の賛辞を受けるほど特別な存在感を放っています。