スペイン カタルーニャ発 とっておきの秘蔵っ子!
ビールに枝豆、海水浴に花火大会。夏は充分満喫したし暑さはもう飽き飽き、なぁんて思っていても、ツクツクボウシの鳴き声が聞こえ始めると、移り行く季節にちょっぴりセンチメンタルになってしまうもの。今回は、残り僅かな夏を存分に楽しむのにぴったりの、シュワっとフルーティーなカヴァと、あらゆるワインを更に美味しくしてくれる、とっておきのチーズをご紹介します。
その名も「ガローチャ」。スペイン カタルーニャ地方ガローチャ村で作られる山羊乳製セミハードチーズです。チーズの名前にもなっているガローチャ村は、ピレネー山脈麓にあり、降雨量が多く様々な動植物が生育する自然豊かな一帯です。山深いこの地方では昔からどの家庭でも山羊乳製チーズが作られていましたが、近代化の流れとともに、昔ながらの農家製チーズは大規模な工場製チーズにシフトし、伝統的なチーズは急速に姿を消しました。そんな中1980年代にアルチザンチーズ(※)のリバイバル運動が活性化。一時は消滅しかけたこの「ガローチャ」も、村の山羊牧畜協同組合の努力により、滅亡の危機から復活を遂げたのです。
このチーズ、まず見た目のインパクトに驚かされます。
「すごい皮だなぁ・・・」
とティスティング会のメンバーから声があがった通り、表皮がモコモコとしたグレーのカビに覆われているのです。雨の多い多湿な土地を思わせるこの自然のカビは、湿った土や独特のキノコのような香りがします。熟成が進むと、時に鮮やかな蛍光イエローのカビが班点状に現れる事があります。地元の人が「ガローチャ」を「花が咲いた外皮」という意味の「ペル フロリダ」と呼ぶのは、そんなカビに由来するのではないでしょうか。「本当に食べられるの?」と心配になるくらい無骨な外観ですが、一度ナイフを入れると中からオフホワイトの生地が姿を現し、ヨーグルトの様な酸味を感じさせる爽やかな香りが立ち始めます。口の中でしっとりと溶け、山羊乳独特のほのかな酸味と甘み、後味にナッツを思わせるコクが長く余韻を残します。
「これ山羊乳なの?!へぇ~見た目とは違って優しくて良い味だねぇ。」
という感想に、その場にいた皆が賛同していました。
※アルチザンチーズ・・・昔ながらの伝統的な製法と職人の技により、少量ずつ丁寧につくられるチーズ。