シャンパンと熟成したトロトロのチーズとのリッチな味わい
一つ一つ丁寧に栗の葉に包まれたチーズ「バノン・ア・ラ・フォイユ」の産地は南フランス、プロヴァンス地方。近年、ラベンダーの栽培で有名になったこの地方には今でこそ多くの観光客が訪れていますが、このチーズの産地であるバノン村は石ころだらけの痩せた土地で、かつてはアルプスの裾野にある小さな農村のひとつに過ぎませんでした。「バノン」と名付けられた山羊乳製のチーズは古くから各家庭でつくられていましたが、以前はタイムやローズマリー、サリエットといった、その土地のハーブをまぶしただけのものでした。
AOCを取得したのは4年前、2003年の事。製造方法が統一され、栗の葉に包むことが条件になりました。栗の葉は秋に収穫した茶色のもので、5%のお酢をいれた熱湯に通して殺菌したものを使用し、チーズ全体を覆うように包んでいきます。その後、8~12℃のカーヴで約2週間ほど熟成させると、中身はしっとりと柔らかくなってきます。フランスの大半のシェーヴルは白く、さわやかな酸味とさっぱりとした風味が特長ですが、「バノン」には酸味はなく、柔らかくねっとりしています。AOCを取得してから一気に注目されるようになったとはいえ、現地で味わうようなトロトロの「バノン」には、日本でお目にかかれることは滅多にありません。