ふんわりやさしい味わいです
ガリシアの上品なチーズにイタリアのスパークリングワイン
北西スペイン、ガリシア地方の小さな町、サンチアゴ・デ・コンポステーラは、9世紀初頭にキリストの12使徒の中のひとり聖ヤコブの墓が発見されて以来、ローマ、エルサレムに並ぶ3大聖地のひとつとして多くの巡礼者が訪れます。巡礼街道には、多くのチーズも並んでいたはずですが、残念ながらチーズの記録はほとんど残っていません。
ドングリのような可愛い姿の「サン・シモン」のふるさとは、ガリシア地方の内陸部ルーゴ県です。起伏が多く、森林の中に牧草地が広がっています。温暖で降雨量も多く牧草がよく育つためか、はるか昔から牧畜が盛んに行われていました。
チーズは細長い木型に入れプレスして水分を抜き、「オレオ」と呼ばれるガリシア特有の高床式貯蔵庫で空気にさらした後、燻されていました。製造は母から娘へと継承されてきましたが、近代化に伴い工場で生産されるようになりました。スペインがEUに加盟した1986年以降、農家製はほとんど見かけなくなってしまいました。現在、登録されているサン・シモンの生産者は6軒。スモークに使われている木は、ガリシア地方のどこにでもあるアベドゥールと呼ぶ樺の木の一種です。今回試食した「サン・シモン」は1990年創業の「ケイシェリア・カタドイロ」から届いたものでした。ほのかな酸味と上品なスモークはキャラメルを連想させてくれます。