ライウイスキーの故郷の話をしよう。ただし現在はその面影はなく、バーボンウイスキーの聖地ケンタッキー州がそのスピリッツを受け継ぎ、ライウイスキーをつくりつづけている。
本来ならば「ノブクリークライ」を飲みながらお読みいただきたいところだが、今回はあえて人気クラフトバーボン「ノブクリーク」をおすすめしたい。アメリカ合衆国誕生時に中心的役割を担ったこの地を見つめるのに、力強く深いコク、キャラメル的なバニラ様の甘みをしっかりと抱いたこの酒がふさわしいと想えるからだ。
礎石の州(Keystone State)。アメリカ東部ペンシルベニア州(州都ハリスバーグ)の別称である。アメリカ合衆国において最も歴史のある州のひとつであるだけでなく、若い国家が成長していくなかで、何かとペンシルベニアは重要な舞台となり、“いしずえ”となった州である。
フィラデルフィア。ニューヨークとワシントンD.Cの中間に位置するこの都市で、独立戦争時の1776年7月4日、独立宣言が採択された。よってアメリカ独立記念日は7月4日となった。1787年、合衆国憲法が立案(施行1788年)された地でもある。1年間だけニューヨークを首都にした後、ワシントンD.C.建設の間の1790年から10年間、フィラデルフィアは合衆国の首都でもあった。
また南北戦争時、ゲティスバーグは最大の激戦地となった。1863年、ゲティスバーグの戦い後、国立戦没者墓地の奉献式においてリンカーン大統領が「人民の、人民による、人民のための統治」と演説した。
さらには1859年から1870年代にかけて、アメリカ史上初のオイル・ラッシュに湧いた州でもある。それは1890年代までつづき、最盛期には世界の原油生産量においてペンシルベニア産が三分の一を占めるほどだった。
ピッツバーグはミシシッピ川につながるオハイオ川の起点となる町として栄えていたが、1875年、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーがここで第一歩を踏み出してもいる。
歴史的には17世紀前半からイギリス、オランダ、スウェーデンの領有権争いがつづいた。イギリスのペンシルベニア植民地創設となったのは1681年のことになる。州名のシルベニアとはラテン語。森のことを言うらしい。ではその前につくペンとは何か。