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「サントリーホール アカデミー」トピックス

室内楽アカデミー

チェンバーミュージック・ガーデン
選抜演奏会
~アカデミーのフェローが成果を発表

山田治生(音楽評論家)

6月に2週間開催されるチェンバーミュージック・ガーデン(CMG)では、室内楽アカデミーのフェロー(受講生)たちが、コンサートのプログラムに参加するのも特色となっている。
CMGでの演奏を目指して、4月3、4日にブルーローズ(小ホール)で堤剛アカデミー・ディレクター、ファカルティの臨席のもと、選抜演奏会がひらかれた。2日間の選抜演奏会で各グループは、それぞれの日ごとに、弦楽四重奏曲やピアノ三重奏曲の全曲を演奏。まさに昨年9月から研鑽を積んできたフェローたちの成果の発表の場であった。
毎年、CMG最終日の「フィナーレ」で演奏するアカデミー選抜アンサンブルは、その期のフェローたちを代表するグループといえる。今年は、クァルテット・インテグラ(三澤響果、菊野凛太郎、山本一輝、築地杏里)が選ばれた。

  • クァルテット・インテグラ

    クァルテット・インテグラ

彼らは、全員まだ桐朋学園で学ぶ20歳代の前半の青年であるが、2015年4月に結成というから、グループとして4年の歴史を持つ。クァルテット・トイトイの名前で活動を始め、既にコンサート等にも出演している。今年1月、クァルテット・インテグラに改称。彼らの特徴は、まず、元気が良いこと。最強音での全員が一丸となった音の迫力は他の追随を許さない。そして演奏に対する集中度が高い。ファカルティの池田菊衛は彼らの演奏を評して「君たちがこの曲を大切にしているのがわかった。君たちの曲に対する共感を、感じました。それはとても大事なこと」と述べた。若手でありながら、既に多くの経験を積み、完成度が高い。選抜演奏会で筆者が聴いた彼らのベートーヴェン弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」の見事さは、アカデミーの成果発表の域を越えているように思われた。ファカルティの原田幸一郎をして、この若い音楽家たちに「絶対、弦楽四重奏を続けてください」と言わしめた。今後、国際コンクールなどでも活躍するであろう。6月16日の「フィナーレ2019」で演奏するのは、バルトークの弦楽四重奏曲第2番第2楽章。この難曲にクァルテット・インテグラがどう挑むのか聴きものである。
また、クァルテット・インテグラのチェロ奏者、築地杏里は、6月1日の「オープニング 堤剛プロデュース2019」に出演。堤剛(チェロ)とともにヴィヴァルディの「2つのチェロのための協奏曲」のソリストを務める。

6月6日の「ディスカバリーナイトⅠ」での演奏には、トリオ デルアルテ(内野佑佳子、河野明敏、久保山菜摘)が選ばれた。ハイドンの「ピアノ三重奏曲第31番」とハイドン編曲の「スコットランドとウェールズの民謡歌曲集」より、という凝った選曲。

  • トリオ デルアルテ

    トリオ デルアルテ

トリオ デルアルテは、サントリーホール室内楽アカデミーの第4期(2016~18)に参加するために2016年に結成され、チェロのメンバーを交代しながらも、引き続き第5期生としてアカデミーで研鑽を積んでいる。昨年は、シンガポールでの、ヨン・シュー・トー音楽院とサントリーホール室内楽アカデミーとの共同プロジェクトに、アカデミーを代表して参加し、ドヴォルジャークのピアノ三重奏曲第3番などを演奏した。表情豊かなヴァイオリンの内野、思慮深い演奏をするピアノの久保山、そして新たに加わったチェロの河野の三人は、このアカデミーでレパートリーを開拓し、表現の幅を広げている。選抜演奏会でのラヴェルのピアノ三重奏曲は、色彩に富む、素晴らしい演奏であった。ファカルティの練木繁夫は「バランス的にも難しい曲ですが、とても名演でした」と評した。
ハイドンは、トリオ デルアルテにとって、新しいレパートリーに違いない。とりわけ、ジョン・健・ヌッツォとの「スコットランドとウェールズの民謡歌曲集」は、ピアノ・トリオにとっては珍しい、歌手とのコラボレーションになる。短調の第1楽章と長調の第2楽章という異例の2楽章構成を採る「ピアノ三重奏曲第31番」も興味津々である。

  • アミクス弦楽四重奏団

    アミクス弦楽四重奏団

6月8日の「ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅰ」で、ファカルティである練木繁夫と“師弟共演”をするフェローは、アミクス弦楽四重奏団(宮川奈々、宮本有里、山本周、松本亜優)。アミクス弦楽四重奏団も第4期に続いての参加。第1ヴァイオリンの宮川はNHK交響楽団の第1ヴァイオリン奏者として活躍。第2ヴァイオリンの宮本とチェロの松本は第3期(2014~16)からこのアカデミーで研鑽を積んでいる。ヴィオラの山本は、第4期の途中からの参加であったが、彼が入って、この四重奏団は安定したように思われる。選抜演奏会で弾いたブラームスの弦楽四重奏曲第2番は、作品に合った繊細な演奏だった。原田幸一郎は彼らを「グループとして成長した」と評した。ブラームスのピアノ五重奏曲第1楽章では、師弟の垣根を越えた和やかなアンサンブルが聴けるであろう。

  • クァルテット・ポワリエ

    クァルテット・ポワリエ

  • トリオ・ムジカ

    トリオ・ムジカ

6月15日の「ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会Ⅱ」では、アンサンブル・ラロのメンバーとの共演で、ドヴォルジャークの「ピアノ五重奏曲第2番第1楽章」とチャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」第4楽章もある。ドヴォルジャークでは、クァルテット・ポワリエの若杉知怜、佐川真理、トリオ・ムジカの田辺純一、チャイコフスキーでは、内野佑佳子、タレイア・クァルテットの渡部咲耶、チェルカトーレ弦楽四重奏団の牟田口遥香が参加する。

  • チェルカトーレ弦楽四重奏団

    チェルカトーレ弦楽四重奏団

そのほか、フェローたちによって編成されたCMAアンサンブルが、6月1日の「オープニング 堤剛プロデュース2019」でチャイコフスキーの弦楽セレナードを演奏し、16日の「フィナーレ2019」ではバーバーの「弦楽のためのアダージョ」とエルガーの「序奏とアレグロ」を披露する。また、「フィナーレ2019」では、ピアノ六重奏曲であるグリンカの「『夢遊病の女』の主題によるディヴェルティメント・ブリッランテ」に、第2ヴァイオリンとしてクァルテット・ポワリエの宮川莉奈が参加する。
6月の2週間、フェローたちの色とりどりの演奏が楽しみである。

  • クァルテット・インテグラ

    クァルテット・インテグラ

  • トリオ デルアルテ

    トリオ デルアルテ

  • アミクス弦楽四重奏団

    アミクス弦楽四重奏団

  • クァルテット・ポワリエ

    クァルテット・ポワリエ

  • トリオ・ムジカ

    トリオ・ムジカ

  • チェルカトーレ弦楽四重奏団

    チェルカトーレ弦楽四重奏団

  • クァルテット・インテグラ

    クァルテット・インテグラ

  • タレイア・クァルテット

    タレイア・クァルテット

  • チェルカトーレ弦楽四重奏団

    チェルカトーレ弦楽四重奏団

  • クァルテット・ポワリエ

    クァルテット・ポワリエ

  • アミクス弦楽四重奏団

    アミクス弦楽四重奏団

  • トリオ・ムジカ

    トリオ・ムジカ

  • トリオ デルアルテ

    トリオ デルアルテ

  • トリオ デルアルテ

    トリオ デルアルテ

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