ヴォーチェ弦楽四重奏団の特別マスタークラスを開催
2018年11月14日にヴォーチェ弦楽四重奏団による特別マスタークラスが開催された。ヴォーチェ弦楽四重奏団は現在フランスを代表する弦楽四重奏団として世界的に活躍している。2004年にパリ国立高等音楽院を卒業した4人によって結成され、イザーイ・クァルテットなどに師事。2006年のジュネーヴ国際音楽コンクールで最高位入賞、2009年のロンドン国際弦楽四重奏コンクールで第2位を獲得するなど、世界的なコンクールで成果をあげた。そして世界各地で演奏活動を展開している。録音もアルファ・クラシックスからリリースされている。今回は2018年の日本ツアーの期間に、特別にサントリーホール室内楽アカデミーでマスタークラスを開催してくれた。
室内楽アカデミーから参加したのは、クァルテット・トイトイ(2019年よりクァルテット・インテグラに改称)、タレイア・クァルテット、チェルカトーレ弦楽四重奏団の3つの団体で、それぞれベートーヴェンの「ラズモスフキー第1番」、「ラズモフスキー第2番」、ブリテンの「弦楽四重奏曲第2番」を順に演奏した(一団体あたり約1時間)。ヴォーチェ弦楽四重奏団は、メンバーの2人がひとつのチームを組み、交替でそれぞれの参加団体に対した。
ヴォーチェ弦楽四重奏団の指摘した点を要約すれば、まず、より深くスコアを読み込むこと、スコアの求めるものをはっきりさせること、そしてそれを元にその作品の表現をひとりひとりの奏者がどう突き詰めるか、さらにそれを4人でどう追求して行くか、ということに尽きると思う。そういう意味で、とてもレベルの高いマスタークラスの内容だった。ヴォーチェ弦楽四重奏団のメンバーは、名前をチェックして参加団体のメンバーに呼びかけるなど、終始、和やかな雰囲気の中でマスタークラスは進んで行った。いわゆる先生と生徒的なマスタークラスではなく、共に室内楽に取り組む仲間としての意識を持ったマスタークラスだったと言っても良いだろう。時にはヴォーチェ弦楽四重奏団のメンバーが楽器を実際に弾いて、音色を探るようなシーンもあった。
マスタークラスの最後には質問のコーナーも設けられたが、そこでは「クァルテットの名前について」「コンクールでの選択楽曲について」などの質問がアカデミーのフェローから出された。最後にヴォーチェ弦楽四重奏団から挨拶があり、「とても水準の高い団体ばかりで、充実したマスタークラスが出来ました」と感謝の言葉が述べられた。
現役で演奏活動を続ける団体によるマスタークラスが開催されるのは、なかなか時間的に難しい。その意味で、今回のマスタークラスは有意義な時間となった。