2015年12月16日(水)~2016年2月7日(日)
※作品保護のため会期中、展示替を行ないます。
水はその神秘性により、信仰の対象となった側面があります。流水文の銅鐸などは、水への切実な祈りが太古の昔からあったことを物語ります。また、盟神探湯(くかたち)、湯立(ゆたて)、禊(みそぎ)、さらには滝行から、密教の灌頂(かんじょう)、お水取りなど、水を媒介とした神事、仏事は数多くありますが、それらは水の神秘的な力に期待した結果であるといえます。現代でも馴染みあるものとしては、温泉が挙げられるでしょう。さらに、社寺縁起には、仏像が水の中から現われたり、海を漂い流れてきた霊木を用いて仏像を造ったり、水とかかわるものが多くあり、それは水を介することによって像の霊力を増す意味合いがあります。代表的なものが長谷寺の十一面観音像といえ、本展では長谷観音として由緒ある、パラミタミュージアム所蔵の「十一面観音立像」を館外初公開します。ここでは、水を用いる神事・仏事にかかわる作例から、水と深い関係のある社寺縁起など、水の神秘的な力にまつわる作例を紹介します。
信仰が高まるに従って、水は次第に神格化され、時に神仏として祀られるようになります。その中で著名なのは、仏教の弁才天です。もともと古代インドのサラスヴァティーという河で、日本では特に室町時代以降民衆に広まって盛んに信仰され、現在でも各地に祀られています。本展では、江島(えのしま)、竹生島(ちくぶしま)、天川(てんかわ)、厳島(いつくしま)にまつわる弁才天の姿を紹介します。また、海運の神として信仰を集めた住吉神のほか、さまざまな水の神仏とそれにまつわる造形作品をご覧いただきます。
水信仰で中核となったのは、人々の生活はもとより、五穀豊穣さらには国家護持にも直結する祈雨(きう)であり、その儀礼の中心的な本尊となった龍神といえます。龍神伝説は日本各地に残るとともに、今でも物語に多く登場し、その姿は誰もがイメージできるほど我々に馴染みのある神といえます。歴史的に見ても、龍神にまつわる文物は数多くありますが、その姿を表した彫刻・絵画作品、持物(じもつ)である龍珠(宝珠)にかかわる工芸作品に優品が多く残ることは、信仰の隆盛を十分にうかがわせるものです。また、龍女の成仏を説く法華経は、海難からの救済をも説いており、それが華麗な装飾経として表されるものがあります。ここでは、龍神を中心に、雨請いの儀礼も視野にいれつつ、人々が直接的に水に祈る姿を紹介します。
古来我々は、数々の理想郷を思い描いてきました。その中でも、水中の龍宮城、海の向こうの仏国土(ぶっこくど)、または海上に浮かぶ不老不死の蓬莱山(ほうらいさん)など、人々が憧れてきた理想郷の多くは、水に囲まれていることがわかります。神聖な水は、理想郷を守ると同時に豊穣をも約束し、果て無き大海は、この世と隔絶するものとして考えられることで、そのイメージは形作られてきたといえるでしょう。ここでは、豊かな水とともにあるさまざまな理想郷の姿を紹介します。
生命の源である水は、元来吉祥と結びつきやすい性格があります。そのため吉祥文様の中には、多くの水の表現を見ることができます。代表的なものとしては、長寿の意味合いのある菊水文様が挙げられますが、中には滝を文様化したものがあることも注目されます。滝は古来御神体となったことや、それと対峙することが観瀑(かんばく)として尊ばれたことを考えると、滝そのものの表現やその文様には吉祥の意味があることが理解されるでしょう。この章では、婚礼など祝いの場で用いられた器物と合わせ、絵画、工芸、染織にわたって人々の生活を彩ってきた吉祥の意味合いをもつ水の造形を見ていきます。
信仰を集める水の霊地には社寺が建てられ、その信仰世界は参詣曼荼羅や宮曼荼羅に描かれてきました。また、水が豊かな地には都市が発達することも多く、そこでは京都における祇園祭のように、水にまつわる祭礼が行なわれる例が見られます。それらは近世において、名所図や祭礼図、都市図として多く描かれ、水の聖地のその後の繁栄を華やかに伝えます。ここでは、おもに絵画作品を通じ、古代・中世の水の聖地とその後の姿をご覧いただき、エピローグとします。
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