2009年9月19日(土)~11月3日(火・祝)
※作品保護のため会期中、展示替をおこなう場合があります。
※各作品の展示期間については、美術館にお問い合わせください。
現在手にする紙の殆どは、機械を用いて作られる西洋式の紙、すなわち洋紙です。
近代、この洋紙の流入に対して、日本に自生する楮(こうぞ)や雁皮(がんぴ)などの植物の繊維を利用して、手漉きにより作り出された紙を和紙と称するになりました。それまでの長い時代、和紙は文字や絵を表わす素材として重要な役割を担うとともに、そのしなやかで丈夫な特性から多様なすがたに加工されて、暮しの隅々にまで深く浸透して用いられてきました。この和紙を育み表現に用いてきた歴史からは、自ずと日本人の美意識が感じられるとともに、日本人の暮らしにおける和紙には用と美の調和をみることができます。
本展では、和紙の発展を促した写経をはじめとして、和紙を美しく飾る技法が施された紙や工芸品、紙衣(かみこ)や紙布(しふ)などの衣料、さらに屏風(びょうぶ)や襖(ふすま)に障子(しょうじ)、行灯(あんどん)や提灯(ちょうちん)など、日本の風土に相応しい調度や器物、日本人の豊かな造形力がみられる折形や遊戯折り紙など、多彩な表情を持ち日本の文化を支えた和紙の世界をご覧いただきます。
和紙に替わる素材が多く活用される現代において、改めて素材としての和紙を見つめ直し、その魅力をご紹介します。
大陸より伝来した紙とその製法をもとに、日本に自生する楮や雁皮などを用い、和紙が作り出されます。それは国家整備や仏教を広めることが重要視された時代に重なり、行政や写経を目的に多くの紙が求められました。日本各地で和紙が作り出されるとともに、素材の吟味や製法の向上が図られ、特に写経は荘厳のために紙を美しく飾る技法が考え出され、後世の料紙装飾へと引き継がれていきます。手漉きの素朴な和紙から展開して豊かな表現が広がります。
自然の中から生み出されたことで、清浄なる恵みとみられた和紙。人々は、この和紙に祈りを籠めて神仏に捧げる造形を創り出してきました。今日まで連綿と伝えられてきた造形も多くみられます。折り畳むなど、手を加えることにも耐える強くしなやか和紙の特質が活かされて、日本人独自の造形感覚が発揮されてきたといえます。また、あまねく優しい光をなげかける「光の彫刻」で平和への願いを込めた、イサム・ノグチ作の「2mのあかり」を特別出品します。
中世より近世へと時代を経るごとに、和紙の種類は多様化し、また広い階層に浸透して用いられるようになります。紙漉(かみすき)をはじめとして和紙に関係する多くの職人のすがたが、歌合絵巻や近世の風俗画にみることが出来ます。また、和紙の生産そのものが経済的に有効とみなされていたことは、紙漉の製法や和紙の産地を伝える本が出版されていたことからも理解されます。さらに、和紙見本の集成資料は、その当時の和紙の傾向や特質を伝えており、貴重な財産となっています。
日本の気候風土に育まれた和紙は、日本の暮しを支えるに有効な特質を備えています。住まいの温度湿度の調節に長けた襖や障子などの建具、明かりを保護するとともに暖かいひかりをもたらす提灯や行灯、軽さとぬくもりでからだを包む紙衣や紙布などに活用されてきました。さらに実用的なものだけでなく、熨斗(のし)などの折形や遊戯折り紙など、日本人の暮らしに潤いをもたらす造形が多数生み出され、現代の日本にも馴染みの造形として引き継がれてきました。和紙の特質は今後の活用の可能性を秘めていることを、作品を通してご覧いただきます。
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