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研究助成

成果報告

研究助成「学問の未来を拓く」

2022年度

わが国女性政治家の視覚的・聴覚的印象をめぐる総合的研究

東京大学大学院総合文化研究科 教授
鹿毛 利枝子

 本研究は、女性政治家の服装や表情、声音といった視覚的・聴覚的要因がわが国において有権者の印象や投票意欲にどのように影響を及ぼし、それらの要因が女性議員の少なさにどのように繋がっているのかを実証的に検証しようとするものである。本チームのうち、田中世紀(オランダ・フロニンゲン大学)と鹿毛はこれまでにもジェンダー領域の政治学的研究を行ってきたが、本研究を遂行する上で不可欠な視覚的・聴覚的要因についての専門的な知見は多くない。そこで本研究は言語学の専門家で、聴覚及び視覚的な要因が人々の印象に与える影響について研究実績のあるClaire Bowern教授(アメリカ・イェール大学)に参加してもらうことでこの課題の克服に繋げようとするものである。
 助成期間開始後、先行研究の読み込みを行い、調査票の設計を開始した。また本研究において実施予定の調査については、2021年3月にパイロット調査を行い、この調査に依拠した論文を2021年末にJapanese Journal of Political Scienceに投稿したところ、2022年11月に公刊が決まった(2023年3月に公刊)。この過程において、レフェリーより多くの有益なフィードバックを得ることができたため、これらのコメントも踏まえて先行研究を当初の予定よりも時間をかけて幅広く読み込むこととなった。これらのコメントは調査の設計においても活かされている。また2023年2月に財団で開催して下さった中間報告会においても多くの有意義なコメントを頂き、これまでとは異なる観点から研究を捉え直すことができたので、それらを踏まえて再度先行研究を読み直し、調査票に修正を加えている。
 当初の予定では、2022年秋にはアンケート調査を実施し、同年中に調査データを整理した上で、2023年はじめには論文執筆を開始する予定であったが、研究チームメンバーの健康上の理由などにより、予定が当初よりもずれ込むこととなった。
 調査票の設計は既に開始しているが、関係分野の研究者からフィードバックを得た上でさらに修正を加え、倫理審査の申請を行う。倫理審査承認後、できるだけ早い時期に本調査を行う予定である。その上で、回収データの分析を行い、論文を執筆し、学会や研究会などにおいて報告を行い、フィードバックを得た上で、さらなる修正を行い、査読誌への投稿へとつなげる。

2023年8月