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研究助成

成果報告

研究助成「学問の未来を拓く」

2021年度

習近平効果を検証する:現代中国の政策過程の可視化に向けて

青山学院大学国際政治経済学部 教授
林 載桓

1.研究の進捗状況
 本研究の狙いは、習近平政権期中国の政治変革の効果を検証することである。具体的には、経済・社会・軍事・外交などさまざまな争点領域における政策実施の現状に焦点を当て、習近平政権が引き起こしてきたさまざまな政治的変革が、政策実施の現場においてどのような「効果」をもたらしているかを、実証的に検証することを目指してきた。具体的に本研究会は、(1)各メンバーがそれぞれの領域で入手・活用可能な資料・データの検索と収集を進めるとともに、(2)外部研究者の講演を主とする研究会(4回)を開催し、データ分析を通じて具体的などのような知見が得られてきたかについて議論を行なった。

2. 研究の成果・得られた知見
 本研究会の主な活動として、(1)外部研究者の講演会を4 回、(2)メンバーによる中間成果の報告会を1回開催した。中間報告会では、メンバーの伊藤亜聖と林載桓が、10 年間の習近平演説・講話から作成したデータベースをもとに、経済政策の論調と実体経済の関係を分析した研究を発表した。当研究は、「Catching the Political Leader’s Signal: Economic Policy Uncertainty and Corporate Investment in China」とのタイトルで経済産業研究所(RIETI)のワーキングペーパーとして公表されている。なお、本研究会で得られた知見は次の二つである。
・ データは(豊富に)存在する:一部アクセスが制限されているとはいえ、情報のデジタル化は中国でも急速に進んでおり、さまざまなデータベースから大量かつ多様な形態のデータの入手が可能であることを確認した。
・ データから「エヴィデンス」を抽出するのは容易でない:データは豊富に存在するが、それを「エヴィデンス」に転換するには、検証可能な仮説の設定とともに、データ活用の具体的な手法に関するさらなる学習と工夫が必要である。

3.今後の課題と計画
 当初の計画では、基本的なデータの加工や分析の手法についてメンバー全員が一定のスキルを身につけることを想定していたが、メンバー間の関心や経験の違いにより、現時点において実現していない。今後、適切な学習プラットフォームの共有を図っていきたい。
・ 研究成果の報告と対外発信(2022年10月〜)
・ ウェブサイトの公開(2022年12月〜)

2022年9月