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研究助成

成果報告

研究助成「学問の未来を拓く」

2019年度

創造的な発想力はどこから生まれるか?~知能と芸術的才能の関連性を探る~

マックス・プランク認知神経科学研究所(ドイツ) 研究員
大黒 達也

1. 研究の進捗状況

階層の深い記憶が,創造性と関連していることがわかった(Daikoku, 2019).特に創造性は,生成情報のエントロピーで評価できる可能性を示した(図1).この結果を受けて,音楽の音波形(wav file)から階層性を抜き出すことを試みた.その結果,音楽のジャンルに関わらず.波形のリズムの階層性があることがわかった(図2右)(Daikoku and Goswami, under review).


2. 成果

本助成による研究で,査読付国際誌に3本掲載され,さらにSpringerから出版される「Artificial Intelligence for Music」という学術書のチャプターが出版される.

3. 新たに得られた知見

ヒトの創造性には,記憶情報のチャンク(情報圧縮)が大きな鍵を握っていることが示唆された.さらに,発達障害やアスペルガーなど特殊な思考方法を持つような人では,この記憶情報の圧縮に何らかの特別なメカニズムがあるのではないかと推測している.これに基づいて,申請者は発達障害の創造性を明らかにすべく,新たな脳の学習と発達のモデルを作成した.このモデルを用いることで,発達障害へ様々なアプローチが可能となる.

4. 今後の課題と展開

申請者が神経科学的・計算論的研究を通して新たに提案した脳の学習と発達のモデルを用い,個性や創造性を創発する脳メカニズムを明らかにする.そしてその個性をさらに伸ばしたり,事故や誤りの元となるような癖を修正したりするような学習支援システムを開発する.また本研究では,特別な個性を持つ発達障害の個性も理解し,当事者の自己理解と社会的共有を促す.本研究をもって,あらゆる個性をもった全ての人間が自身の個性を理解し,そして互いの個性を理解し合えるような社会を目指す.

2020年7月

※現職:東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任助教

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