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研究助成

成果報告

研究助成「学問の未来を拓く」

2019年度

学際としての「北陸学」の構築を目指して

金沢大学国際基幹教育院 准教授
井出 明

2年目となる本年は、北陸における地域学としての“北陸学”の構築を目指し、さらなる学際研究を展開することになった。前年の中間報告の際に指摘事項となっていた「北陸を東アジアや環日本海と言った巨視的な観点から考察すべき」という点については、2019年12月の研究会から意識することとなり、北前船の専門家を招いて北海道との連続性の中で北陸を捉え直すことになった。世界史的視野からの分析については引き続き検討を行いたい。

また地理的に連続性がありながらも、北陸の概念に含めるべきか否かという論点がしばしば議論される新潟については、2019年9月と2020年2月の2回に渡って研究会で掘り下げた。

さらに、2020年2月の研究会では、北陸の電力事情について詳しく検討する機会を得、そこで日本近代における複雑な当地の歴史に関しても知見を深めた。

なお、新型コロナウイルスの影響は本研究会にも及び、2ヶ月に一回の割合で研究会を開催していたところ、2020年3月以降は暫く休止せざるを得なくなった。しかし7月以降はZoomを用いた遠隔配信により、研究会を試験的に運用してみることにした。するとこれまで、時間的及び経費的な面から北陸にお呼びすることが難しかった講師の講演を設定することが可能になり、遠方の有識者の話を聞くことが出来るようになった。この手法を用いて、7月は北陸の歓楽街についてお話を伺い、9月には醤油という地場産業への理解を深めた。コロナは確かに本研究会の活動の足かせとなった部分もあったが、北陸について、北陸外の居住者との討論を促進できたという意味で、我々に新しい視点をもたらしてくれたとも言えよう。

2020年9月

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