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研究助成

成果報告

研究助成「地域文化活動の継承と発展を考える」

2018年度

コミュニティ演劇イベントによる「おらが村」への愛着形成に関する研究-誇りの再生と関係人口の拡大の第一歩として-

特定非営利活動法人人と地域の研究所 研究員
山田 憲人

限界集落の再生においては、まず住民自身が地区愛着や誇りを取り戻す「足し算の支援」が必要である。その上で支援の担い手となりえる関係人口を戦略的に確保することで地域継承の可能性が高まる。

研究グループは八畝地区での過去の地域文化活動を通じた感触としては「住民が集い八畝を語り合う場」「住民と外部者(観客、演劇関係者、学生)が八畝の文化景観を共有体験する場」「住民と外部が八畝を語り合う場」が形成され、1)住民の地域愛着と誇りの再生、2)八畝に愛着を持ち地区の支え手となる関係人口の増加、に繋がっていると感じられる。

本研究はこのような暗黙的な知見の学術的な検証を試みるとともに、住民・外部者の双方が地域への愛着やコミットを高めるための活動の改善ポイントを明らかにすることを目的とした。

2018年秋及び2019年春のコミュニティ演劇イベントにおいて、観客・演劇関係者及び観劇や交流会に参加した住民を対象にしたヒアリング調査を行った。

観客からは『2回3回より身近に感じるようになり、八畝という漢字を見かけると、親しみがあるなという風にも感じている』『ここで生産をされた商品を買うことで地域にお金がおりるというサイクルを考えた時には、周りの人にも八畝のことを伝えたい』などの意見が寄せられた。

演劇関係者からは『村の人が自分たち自身を語る言葉を獲得してくれると良いかなと思って、仕事がないとか人が少ないとかいうような言葉ではなくて、「いや、私たちの八畝はね」っていう言葉を持ってもらえるような。「文化的に私たちは遅れているんだ」じゃなくて「文化的に最先端にいるんだ」っていう状況を作り出したいと思ってやってんだよね』『みんな目をウルウルとさせていて、来てよかったっていうのを言っていただいて、私たちがやっていることは間違ってないんだという気持ちになりました』『この方たちの力のために、私たちの演劇っていうものを役立てていただきたい』などの意見が寄せられた。

このことから、コミュニティ演劇イベントを通じた外部者(観客・演劇関係者)の八畝地区への愛着と地域再生へのコミットの増加を確認できた。

また住民からは『八畝が好きという人が来てくれているのは嬉しい。自分も八畝のことが好きだから。自然とか。若いお兄ちゃん(学生)がいるのも。』『こんな山奥に学生やまちの人が来てくれると元気が出る』などの意見が寄せられ、コミュニティ演劇イベントを通じた住民の八畝地区への愛着と埃の強化を確認できた。さらには『村のお屋敷で演劇と交流会を行うことで、今まで遠慮してきたお家にがることができて、地域の繋がりが強くなった』など、コミュニティ演劇イベントが地域住民間の紐帯の強化に繋がっていることも確認できた。

来年度以降はヒアリング調査のサンプルを蓄積し、より精緻な分析を行うとともに、コミュニティ演劇イベントを通じて八畝に愛着を獲得した外部者が地域の支え手として具体的にどのような支援意志があるのかを分析することにより、コミュニティ演劇イベントを通じた外部者の愛着と地域再生への貢献意識の強化、住民の愛着と誇りを地域再生に活用するためにどのような仕組みのデザインが可能なのかを明らかにしたい。

2019年8月

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