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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2018年度

今後の労働力流動と女性の働き方に関する学際的研究 -日芬研究者グループによる就労課程の比較を通じて-

特定非営利活動法人まなびのたねネットワーク 副代表理事
髙橋 保幸

本研究の目的は、女性の技術分野の就労に焦点を絞り、労働力の流動の中で女性がどのような経路を辿り就職し、それが国によってどのように異なるのか女性の社会進出先進国であるフィンランドとの比較を通じて、文化経済的、教育制度等の歴史的な切り口から明らかにすることにある。

日本女性の就労場所として、なぜ技術分野へ進出ができていないのか。そして現在もそれを阻むものは何か。これらについては、これまで先行する国と比較した課題が明確にはなっていなかった。日本とフィンランドでは、どこが同じでどこが異なるのか。実態調査を基本に日本の課題点を学術的に明らかにし、それに対する改善策を考察した。

これまで本研究では、日本の小学生及び高校生にアンケート調査を協力いただいた他、フィンランドの女性技術者の現状について聞き取り調査の協力をいただいた。ここでの知見としては、日本の状況として、小学6年生の回答では性別に関係なく技術的な作業(モノづくり)に興味があるが、高校生からの回答では女子学生で「関心なし」、「興味なし」が多くなっていることが分かった。これは今後詳細な分析を行うことになるが、小学生においては技術的な体験を行った前後で興味が変化する児童も多くいることから、何らかの経験や体験によるものが興味に繋がることが分かった。

フィンランドの状況は2016年に同様の調査をした研究者等のインタビューから、興味や関心については日本と大差ないことが分かった。違いが見えているのは、両国の就業制度及び技術職を選んだ女性の得意な分野と仕事に関するコンピテンスの自覚の有無の点であり、今後学術的な追及が必要な部分である。

また、ここまででは女性技術職の就業部分の具体的な実態が掴めておらず今後は働く場での比較調査が必要となってくる。現在の仮説として、日本、フィンランドにおいて技術やものづくりへの興味は同じであっても、仕事として考える場合は制度が大きく関係しているといった制度面での課題と自己のコンピテンスと仕事の関係を問う課題の存在である。

今後は、これらの解決のため、日本においても近年女性が多く就業するようになった職場とフィンランドの状況がどのように酷似しているか「リカレント(再就職者)」を含んだ現場調査を行うと共に、コンピテンスと仕事について日本、フィンランドの女性技術者等からの聞き取りを行いその結果を公表していきたい。

2019年8月

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