成果報告
2018年度
小泉内閣期における「官邸主導」と自民党-未公開議事録を用いた共同研究
- 東海大学政治経済学部 教授
- 奥 健太郎
1、本研究課題の目的
小泉内閣の政権運営は、今日につながる「官邸主導」の起点として位置づけられる。そして、その新しい政権運営のスタイルは、与党事前審査制を基軸としてきた自民党に、大きな衝撃を与えたはずである。その衝撃を自民党はどう吸収し、政府与党関係は小泉政権期にどのような変貌をとげたのか。本研究は、我々が入手した自民党の未公開議事録(メモ)を用いて、与党側の視点からこの点を多角的・学際的に分析しようとするものである。
2、研究活動の概要
2018年度は大きく分けると3つの活動を行った。
(1)研究会の開催―未公開議事録の紹介と分析
議事録は19冊に分かれている。これを各研究者が分担してテキスト化するとともに、研究会では、各人が担当箇所の内容紹介と分析結果の報告を行った。2019年7月までに約半数の議事録の紹介を終えているが、2019年11月までに全冊の紹介が終了する予定になっている。今のところ、得られた知見を包括的に報告することはできないが、現段階での直観では、政調会の舞台回し(会議の段取り、参加するメンバー)、自公間の与党責任者会議、いわゆる「インナー」と平場の関係など、従来の研究では詳らかにしえない深度で、この時期の政治過程を解明することができると考えている。
(2)清水真人氏(日本経済新聞社編集委員)からの聞き取り
「小泉内閣と『官邸主導』」といえば、清水氏の『官邸主導』(日本経済新聞社、2005年)を抜きに語ることはできない。今年度は清水氏のご協力を得て、計7回(そのうち6回はオーラルヒストリー的なもの)清水氏から聞き取りを行った。これにより「官邸主導」の分析を行う上での視野が広がるとともに、分析の着眼点を数多く獲得することができた。
(3)その他の聞き取り
政治過程の裏方で自民党や国会を観察してきた方々へのインタビューや、外部研究者からのご講演をいただいた。これらの方々からは、政府―与党―国会の関係について、経験的に、歴史的に、あるいは国際比較の観点からお話いただき、多くの示唆を得た。
3、今後の活動と課題
我々の最終的なゴールは、学術書の刊行である。2019年中には執筆者と仮テーマの決定を行い、各自のテーマに従って分析を進めていく。議事録は網羅的なものでなく、部分的な情報であるため、今後はインタビューを含む周辺資料の収集を本格化させる必要がある。論文集の刊行の目途としては、小泉政権誕生から20年後にあたる2021年を予定している。
2019年8月