成果報告
2018年度
学際としての「北陸学」の構築を目指して
- 金沢大学国際基幹教育院 准教授
- 井出 明
北陸という地域は、一般に石川・富山・福井の三県を指すと言われているが、この三県の内部とて一様ではなく、石川県能登地方と金沢では文化的な差異も大きい。言葉として存在しているが実態を捉えきれないこの「北陸」について、多方面から学術的にアプローチしてみたいという思いが研究会結成の端緒となっている。
研究チームはこうした問題意識に基づき、およそ2ヶ月に一回の研究ミーティングを持つことにした。初回の研究会では、まず北陸について自然地理学の方法論によって分析することから始めた。第二回目の研究会においては、主として土木インフラの観点から北陸について考えることにした。厳しい気候が新潟も含めた北陸地方に独特のインフラ環境を生み出したことを意識するようになった。続く第三回目の研究会では、名古屋に会場を設定し、ジャーナリストを講師として招聘した上で、北陸のメディアについて概観した。第四回の研究会は、農業の専門家を招き、新潟を含めた北陸地方の農業に関する知見を得ることを目的にした。さらに第五回の研究会では、北陸の観光についてダークツーリズムの観点から捉え直す機会を得た。研究一年目の最後となる第六回の研究会では、前半に北陸の少年犯罪について考え、後半では北陸の芸術文化について検討した。総括するに、金沢はたしかに北陸の拠点ではあるものの、金沢だけで北陸を語れるわけではないという意識を共有するに至っている。
一年目の研究を振り返り、次年度の課題について考えてみたところ、北陸を捉える際に、単に地理的に対象を限定するのではなく、環日本海やユーラシア東部と言ったより広い視野からこの地域を捉える手法を考えなくてはならないという結論に達した。研究の最終的な完成に向けて、学際性の重視に加え、より俯瞰的な視座から考察を深めていく所存である。
2019年9月