成果報告
2017年度
地域・風土性を生かした「デザイン・アート展覧会の実態把握とその体系化」の研究
- 昭和女子大学生活科学部 准教授
- 藤澤 忠盛
■研究の学術的背景:本研究は日本国内から研究を開始し、現在では東アジア東南アジア全域を研究領域に広げながら、実践的な活動と研究を両軸におこなっている。近年のアジア経済の目覚ましい発展と共にデザインとアートも進化し、各国に極めて数多くのデザイン・アート展覧会が存在する。韓国では「ソウルやプサンのデザインフェスティバル」、タイでも増加し、カンボジアでは内戦後に政局は安定し始め、現代デザイン・アートに興味をもつ人が増え始めました。しながら主催者が異なるために、これらはほぼ単独で行われており、密接な情報交換・共有・つながりが出来ていないこが我々の調査から確認されている。
また地域性や風土性を生かしたデザインやアートとその展覧会の存在が薄いもしくは知られていない現状が調査・論文より明らかになっている。呼びかけ・学びあい・交流をすることで密接に繋がり、東アジア東南アジア全域のデザイン・アートとその展覧会を顕在化すること、さらに欧米とは異なるアジア特有のデザイン・アートを創作・研究するために我々はアジアデザイン・アート展覧会コンソーシアムを結成し研究活動を行っている。コンソーシアムでは日本・韓国(ソウル大学)・タイ(タマサート大学)・カンボジア(王立プノンペン大学)の4各国の拠点を中心に日々活動している。現在アジア開催の展覧会は経済発展とともに欧米文化を吸収し、発展しているのですが、逆にアジアの独自性(地域・風土性)が弱まっていることを危惧している。欧米とは違った文化を持つアジア的個性は、今後さらに必要なものだと考えている。
調査方法:各国家のデザイン・アート展覧会をインターネット調査、踏査、文献調査、展覧会企画書調査、開催運営者のヒアリング調査を下記図の4つの拠点を中心に平成29年度―平成30年度にわたって東アジア東南アジア全域に広げて20チーム総勢40名で調査分析を行った。
プロジェクト概要:調査・分析から土着的・民族的で伝統的な国家の歴史を尊重した「王道」とそこから新たに進化している「前衛」の双方が大きく分かれて存在が確認された。これらに焦点を当て、東アジア、東南アジアの全域から作品を公募・推薦し、王立プノンペン大学で今までの研究を実践に落とし込み展覧会を開催することに至った。展覧会を開催し文化交流(シンポジウム、分野別研究会、レクチャーワークショップ等)することで個性あふれる新たなるデザイン・アートの顕在化と創作・研究を行う。またアジア展覧会存在の希薄さは総合WEBサイトがないことが原因の一つにあげられ、このことはアジアのデザイン・アートの個性の埋没につながっており、アジア全域の展覧会を掘り起こしWEBサイトを構築することで世界各国に発信しアジア独自の発展を遂げていくことを目指し活動を継続させている。
2018年8月