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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2017年度

自治体における国民保護の解明と実効性向上の検討-ヒアリング調査と国際制度比較を通じて-

防衛大学校人文社会科学群 教授
武田 康裕

1.研究目的

本研究の目的は、国民保護の主たる担い手である地方自治体に期待される役割と、これを担うための取り組みについて調査・分析を行い、制度や施策の現状と課題を解明するとともに、国民保護の実効性を高める政策的方向性を提示することにある。

2.研究の実施方法

今年次は、2017年8月、2017年10月、2017年12月、2018年1月、2018年3月、2018年5月の全6回の研究会を開催し、地方自治体および中央省庁の実務担当者からのヒアリングと共同研究者による調査報告を実施した。

3.これまでに得られた知見

2004年に国民保護法が成立して以降、地方自治体による計画策定やJ-ALERTの準備が進められてきた。その一方で、各自治体の運用状況には格差が大きく、以下のような課題を確認できた。

  • ・ 計画の焦点が事態発生後の緊急避難・応急に集中し、長期的な帰還困難・復旧作業という想定が欠落しがちである。
  • ・ 自然災害対策と国民保護対策が併存して制度・手続きを複雑化しており、それが行政負担を大きくしている。
  • ・ 各自治体の準備状況は、首長の関心度、職員の能力、住民理解といった属人的要素によって格差が発生している。また、危機管理(災害対策・国民保護)を担える専門的なスタッフが不足する傾向にある。
  • ・ 訓練の頻度が少なく、形式的な手続き確認にとどまる傾向がある。また訓練のシナリオは、想定が多岐にわたり非現実的である。

4. 今後の予定

ヒアリング調査を継続すると共に、訓練視察による実態調査や専門家の招請を行う予定。尚、今年次までの中間成果を、防衛大学校グローバルセキュリティセンターから『グローバルセキュリティ調査報告第2号』として2018年8月頃に刊行予定。

2018年8月

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