成果報告
2017年度
公務員制度改革後の日本の官僚人事システムに関する研究-制度変容の実態把握と理論の再構築-
- 早稲田大学政治経済学術院 教授
- 稲継 裕昭
本研究は、2000年代以降の国家公務員制度改革が中央政府の官僚人事システムにいかなる変化をもたらしたかについて実証的に明らかにし、さらに制度改革後の人事システムを説明するためのモデルを検討することを目的としている。
2008年の国家公務員制度改革基本法の制定、2014年の国家公務員法等の改正、内閣人事局の設置により、現在の国家公務員制度は1990年代までのシステムから大きな制度変更があり、運用もまた変容しつつある。
公務員制度は、官僚の「専門性」と「応答性」、また彼らのモチベーションを規定する統治構造上も重要な制度であり、一連の制度改革が現実の官僚人事システムにいかなる影響を及ぼしているかを観察・分析することは、学術的にだけでなく社会的にも重要な研究課題である。そこで、本研究では、申請者の研究蓄積を生かしつつ、行政学、政治学、教育学、経済学の研究者を加えた研究班を組織して上記問題意識を共有した。
研究班メンバーにそれぞれの本課題に関連する研究報告をしてもらい、ディスカッションを繰り返した。
研究代表者は上記テーマで研究遂行を行い、その一部は、「NPMと公務員制度改革」(『公務員人事改革』(2018年7月学陽書房)所収)として公表した。また、「日本の公務員制度とその改革」(『人事院創立70周年記念誌』(2018年12月)所収)として公表する予定である。
なお、研究班メンバーのテーマは多様であるが、いずれも日本の官僚人事ステムの変容(中央政府および地方自治体)という形でくくることができることから、各報告を論文としてまとめてもらい、出版することを前提に議論を進めている。
現時点で次のような論考で各メンバーが執筆を進めている。
- ・日本の官僚人事システムと仕切られた専門性―専門官の人事システム
- ・ノンキャリア官僚人事システム
- ・官邸主導の人事と政官関係
- ・公務員制度の日韓比較
- ・出向人事研究の現代的意義
- ・ポスト分権化時代の自治体職員採用
- ・自治体における閉鎖型任用システムと開放性
- ・自治体職員の昇進パタンー遅い昇進の中の早い選抜
- ・特別職の議会同意と人事行政
など。
2018年8月