成果報告
2016年度
地域・風土性を生かした「デザイン・アート展覧会の実態把握とその体系化」の研究
- 昭和女子大学生活科学部 准教授
- 藤澤 忠盛
■研究の学術的背景:産業革命以降デザイン・アートとその展覧会は技術革命と経済発展と共に急激に進歩してきた。現在日本では「大地の芸術祭トリエンナーレ(新潟)」「東京デザイナーズウィーク」「瀬戸内国際芸術祭」、など数多くのデザイン・アート展覧会が存在する。これらはほぼ単独で行われており、また何時何処でどのような展示を行っているか解らず、情報が一元化されていない。その理由として、総合HPのようなものがないことが挙げられる。近年では地域おこしの為に各地域の風土性を生かした独自性のある現代デザイン・アート展覧会が開催されるようになってきたが、展覧会とその展示作品の存在がまだまだ薄いともいえる。展覧会は出展者・企画者・研究者・観覧者の大きくはこの4者で形成されている。しかし、既往の展覧会や研究ではこれらを一堂に集めて議論・研究する傾向がない。(図1)その結果、出展者と企画者の意見不一致、観覧者の作品に対する理解不足などの弊害がある。
■研究目的:情報が一元化されていない、日本のデザイン・アート展覧会とその展示作品を調査分析し、実態把握する。それらをまとめて一元化した研究用プラットフォーム(HP)を構築すること。 数多くのシンポジウムを通して地域・風土性を生かした独自性のあるデザイン・アート展覧会とは何かを明らかにすること。「デザイン・アート展覧会コンシアム(仮)」を共通基盤として構築し、企画・運営、CM含む拡散方法、展示会場などシンポジウムに招き多角的な意見交換を行い、地域性を踏まえた分野型横断の研究(図2)を行い体系化することである。
■調査方法と結果:調査期間:2016/6-2016/9調査方法:インターネット調査、各都道府県を22チームに分け、インターネット上で全国のデザイン・アート展覧会のHP調査を行った。主催者がグランドHPを作成し、経年継続して行う意思のるものを見分け、最終的には2016/9の段階でメールや電話等で今後も開催意思のあるものを確認しながら調査を進めた。その結果全国では約150あり、その存在と特性をエクセルにまとめた。
■本研究の特色である「地域・風土性を生かした」とは下記2点に概ね絞られる。
1:展覧会開催コンセプトが「地域や風土性を生かした」という概念を入れて企画されているかという点。「混浴温泉世界」「国東半島芸術祭」のように展覧会の名前に地域性・風土性が入っているもの。
2:出展されている多くの展示作品が地域風土性を生かして制作されているかという点。筆者も越後妻有大地の芸術祭に「里山カーゴ」なる越後妻有の地域に根差した農産物を展示するカーゴを制作し出展したことがあるが、作品コンセプトを練るときは越後妻有の農産品や豊かな土壌など地域・風土にいかに密着させるかをコンセプトにしていた。このように展示されている制作作品の多くが、地域・風土性を生かしているかどうかを継続調査しており、上記150の展覧会の内約25の調査が終了し体系化を開始している。
2017年8月