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研究助成

成果報告

研究助成「地域文化活動の継承と発展を考える」

2016年度

市民が作る音楽祭と地域コミュニティ:社会との相互作用と文化創造

公益社団法人定禅寺ストリートジャズフェティバル協会 理事
佐々木 和夫

1.研究の成果または進捗状況

本研究では市民音楽祭が、地域コミュニティからどのような影響を受け、また地域コミュニティにどのような影響を与え、地域のステークホールダーといかなる関係を構築してきたのか、さらに今後、地域と望ましい関係を作り、同時に文化を創造するためにはどのような条件が必要かを考察することを目的とした。

これを明らかにするために、定禅寺ストリートジャズフェスティバル(仙台市)、やらまいかミュージックフェスティバルin はままつ(浜松市)、ミヤ・ジャズイン(宇都宮市)の3都市をターゲットとし、各音楽祭からの協力を受け、①地域一般市民に対するアンケート調査(各地域、約550名)、②各地域のステークホールダーに対するインタビュー調査(仙台においては仙台商工会議所青年部に対して「仙台市企業の文化活動に対する意識調査」)を行った。

その成果は、8月に開催された全国の市民音楽祭開催団体が集まる「市民音楽祭ネットワークミーティングin すみだ」において発表され、その成果が共有された。

2.研究で得られた知見

一般市民の調査からは、(1)市民音楽祭に対する一般市民の認知度は設立年数や地域の状況によって異なること、(2)一般市民からすると音楽祭の主催者がどの団体かを正しく理解している人は半数以下であること(自治体主催であると勘違いしていることが多い)、(3)一般市民は市民音楽祭に対して継続を望んでいるが、経済的効果や教育的効果をそれほど期待していないこと、(4)一般市民の参加形態として、市民音楽祭には1~3時間、2~5ステージを見るに過ぎず、規模を大きくするよりは、有名人や質の高い演奏を求めていることがわかった。
 また関係組織へのインタビュー調査からは、(1)自治体は市民音楽祭が「市民によって担われていること」を高く評価しており、対外的に地域の「セールスポイント」として活用可能性があると考えていること、(2)いくつかの企業は市民音楽祭を自社の事業に活用していこうと考えていることがわかった。例えば、(株)ヤマハは、市民音楽祭をサポートする中で見出したニーズをもとに、音が一方向にしか飛ばないフラットパネルスピーカーの開発を行った。また研修の一貫として市民音楽祭でのボランティア活動を利用している組織もあった。

3.今後の課題

市民音楽祭は、一般市民に対するコミュニケーションやPR活動において、工夫の余地があると思われる。そのためには、市民音楽祭が社会の中での存在価値があることを自覚する必要がある。今後、市民が作る音楽祭の運営について、地域の特性と全国の音楽祭のネットワークを活用しながら、具体的な課題解決案に資する調査研究がさらに必要となるであろう。

2017年8月

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