成果報告
2016年度
信頼研究の学際化を目指したプラットフォームの構築
-応用哲学的アプローチによる異分野間の方法論の総合-
- 大阪大学大学院基礎工学研究科 特任助教
- 小山 虎
本研究では、信頼研究の学際化という目的を達成するため、昨年に引き続き、積極的な異分野交流が行われた。年間を通じて、共同研究者による報告と議論のための定例研究会を計5回、哲学史、言語哲学、応用倫理学、社会心理学、社会学、政治学など多様な分野の講師を招いた「信頼研究の学際化ワークショップ」を計3回開催し(うち一回は9月に開催予定)、さらに、応用哲学会第九回年次研究大会にて大会シンポジウム「ヘイトスピーチと信頼」を開催した。これらはすべて公開され、一般参加者を巻き込んだ活発な討論が行われた。
これらの多彩な分野での議論の総括として、これまでに開催したワークショップ・シンポジウムの提題者を執筆者とした研究書『信頼研究の学際化』を2017年度内に勁草書房より刊行する予定である。本書では、信頼研究の学際化の基礎研究として、まず信頼研究の始まりであるホッブズ問題に遡り、どのようにして信頼研究が多様化したのかを丹念に跡付ける。次に、現代の多様な分野における信頼研究を分野別に検討する。これらを踏まえて、異分野間の方法論を総合し、それを従来信頼研究が存在しなかった分野に応用することで、より包括的かつ学際的な信頼研究の道筋をつける。このように、本書は、今後さらに多様化するであろう信頼研究において必須な基礎文献のひとつとなることが目されている。
本書執筆にあたり、執筆者が一堂に会した検討会を複数回開催し、内容の質的向上に務めるとともに、異なる分野の視点からそれぞれの内容を検討した。信頼研究を学際化するという目的に照らして、異なる研究背景や用語法を相互に理解可能にするための有益な機会となった。このように、当初の目的通り、定例研究会やワークショップを通じて学際的な信頼研究プラットフォームを構築することによって、活発な異分野交流を実現し、さらに、研究書を共同執筆することができたことは、本研究の大きな成果のひとつである。
今後もこの研究プラットフォームを維持し、異分野の信頼研究を総合するという学際化を越えて、各分野の信頼研究を異分野の視点を取り入れた融合研究として発展させる予定である。
2017年8月