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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2016年度

19-20世紀、欧米における日本学の形成

学習院大学国際研究教育機構 准教授
伊藤 真実子

本研究は、19世紀後半から20世紀前半における欧米における日本学の形成と発展について、幕末から明治初期に創設された日本アジア協会やOAG(ドイツ東洋文化研究協会)など、日本に居住する外国人が組織したSocietyと本国に帰国した彼らが組織したSociety(The Japan Society of London など)を対象に、講演や紀要などの活動、外交官や学者、貿易商など会員のネットワーク、会員同士の交流を調査することで、当時の欧米列強の対アジア/日本政策と、大学など学術研究機関における専門知識の連環を含めて研究することを目的とした共同研究である。

すでに日本アジア協会とOAG(ドイツ東洋文化研究協会)の紀要掲載論文や例会の報告者/題名一覧、要職者(会長/駐日大使)らのデータ化を昨年度終了しており、今年度は、リストにある人物の経歴、本国で発表した日本/アジア関係論文、著書および、後世の研究書/論文についてデータ化を終了した。

また、日本アジア協会との比較のため、Royal Asiatic Societyについて、ロンドンの本部、および、カルカッタ、上海、漢城(ソウル)などの支部についての調査をすすめた。なかでも、Royal Asiatic Society Korea(1900年6月創設、日露戦争期に閉鎖、1911年再度創設)については、創設および再開経緯に着目し、創設期のメンバーであった初代会長イギリス人外交官J.H.Gabbins(日本アジア協会創設メンバーの一人で1900年5月から11月まで駐大韓帝国臨時代理大使(アーネスト・サトウの助言による人事)、臨時代理大使時代にRoyal Asiatic society Korea創設、初代会長)、1911年再開時の中心人物の一人で、アメリカ総領事 George Hawthorne Scidmore(1904年から東京のアメリカ公使館に公使館付特別顧問(参事官待遇)として着任、1909年から総領事に任命)など、日本アジア協会関係者や日本に駐在経験ある人物のRoyal Asiatic Society Korea創設/再開に関与した経緯を調査した。

また、日本アジア協会会員のロンドン大学東洋アフリカ学院創立(SOAS/1916年)の関与にも着目し、創設期から30年代にかけてのSOASの授業(東アジア学、日本学、中国学)と日本アジア協会会員の関与について、調査を進めた。

その一方で、20世紀初頭ヨーロッパにおける日本人留学生の活動と、現地での研究者交流―お雇い外国人として日本に滞在経験のある人物、および、現地の日本研究者との交流について―の調査をすすめた。

以上の調査をすすめるにあたり研究基盤となる情報を充実させ、その基盤情報からRoyal Asiatic Society Koreaの創立をめぐる経緯や、SOAS創立期の日本アジア協会会員の関与についての研究に活用することができた。今後も、この基盤情報をもとに、19-20世紀における欧米のみならず、アジアを含めた海外における日本学の形成と展開について、より広い視野から研究をすすめていきたい。

2017年8月


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