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研究助成

成果報告

研究助成「地域文化活動の継承と発展を考える」

2015年度

地域の「小劇場」の持つ、まちづくりへの貢献可能性に関する調査研究

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任講師
蓮行

1.調査の目的と意義

現在、様々な課題を抱えるまちづくりに対して、コミュニティ形成などに有効的な一つのアプローチとして、小劇場を利用する方法が考えられる。本調査は、地域のコミュニティに根差し、物事の創造の場となるような小劇場を起点としたまちづくりの可能性を定性的に評価することを目的とする。本調査における小劇場の定義としては、最大収容可能人口100人以下の劇場とする。

本調査では、研究対象をKAIKA(京都市)、蛸蔵(高知市)、鳥の劇場(鳥取市)、わが街の小劇場(那覇市)、以上4カ所とし、行政が建てた公共ホールではなく、民間団体が自ら作り上げた場として、様々な特色を持たせつつ地域に根差した活動を続けてきている小劇場であることが特徴的である。また、これまで劇場での調査は、1つの劇場を取り上げて行われることが主流であるため、全国的に4つの異なる劇場を、心理学や経済学等の多分野から比較した研究は本研究が初の試みとなる。

2.調査方法

調査方法としては、まず心理学や経済学を専門にする研究者および劇場経営に深くかかわる実践者を含めた共同研究者とともにスタートアップミーティングを開催し、4つの小劇場を比較するに必要な要素の抽出と、まちづくりという観点から小劇場の役割を捉えるために最適な質問項目の選定を行う。その後、上記小劇場をめぐり、劇場の経営者を中心に抽出された質問を繰り返し、ヒアリング調査を行う。その結果、同規模の劇場がまちづくりにもたらす影響を、比較することが可能となる。

ヒアリング項目の一部を提示する。劇場に関係する基礎的なデータとしては、(1)集客人数およびエリア、(2)活動年数、(3)年間公演数、(4)関係団体の種類、(5)年間事業費、(6)スタッフ人数、(7)開催するイベントの内容、などである。また質問内容は、(1)劇場におけるこれまでの方針とその変遷、およびそのような方針にした理由、(2)劇場に特有の活動、(3)今後の劇場の方向性、(4)劇場のまちづくり機能として根のおろし方、(5)地域における劇場との摩擦、(6)実施するアウトリーチの内容、などを中心とした。

3.調査状況

現状で、4つの劇場に対する調査は終了し、その内容をまとめ比較することができる状況である。調査結果から、劇場の果たす役割を分類化できることが想定される。例えば劇場が地域住民の集うコミュニティ形成の場として果たす役割や、劇場関係者らのアウトリーチによって地域を活性化する役割などである。得られたデータをもとに、他の分類の模索や、一般的にどのような方向性でまちづくりにかかわることが最適な結果をもたらすのか検討することが今後の課題として挙げられる。

2016年9月

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