成果報告
2015年度
国際・国内環境制約下の政策決定過程と内閣の党派性の関係
- 明治大学政治経済学部 准教授
- 木寺 元
【リサーチクエスチョン】
二○〇九年八月の衆議院議員総選挙に民主党は勝利し、政権を獲得する。一二年一二月の総選挙では逆に自民党が大勝、公明党とともに政権を奪還する。
二つの政権交代の結果、政策や政策決定過程は変わったのか。これが本研究の問いである。本研究は、自民党・公明党政権と民主党政権を比較することでこの問いに答えるものである。
【対象期間】
基本的に中央省庁再編が実施された二〇〇一年一月から第三次安倍内閣成立後一年となる二〇一五年一二月にいたる時期までを対象期間とし、事例研究を通じてこの間の政策立案過程を検証した。その際、この時期を次の三つの政権期に分けた。
- ①二〇〇一年一月から二〇〇九年九月までの第一次自民党・公明党政権期
- ②二〇〇九年九月から二〇一二年一二月までの民主党政権期
- ③二〇一二年一二月から二〇一五年一二月までの第二次自民党・公明党政権期
【対象とする政策】
具体的な事例研究としては八つの政策分野について事例研究を行った。
①農業、②電力・エネルギー、③コーポレート・ガバナンス、④社会福祉、⑤税制、⑥外交、⑦防衛、⑧憲法解釈
【政権交代と政策の継続性・変容との関係性の解明】
第一に、自民党・公明党政権も民主党政権も、ともに国際環境からの影響としてはグローバリゼーションの進展、中国を初めとする新興国の台頭など、国内環境からの制約としては人口の少子高齢化、財政状況など国内外の環境制約を受けた。これらの環境制約が自公政権と民主党政権の政策を収斂させ、政権交代をはさんでも政策に継続性をもたらしているのか検証した。
第二に、自民党や民主党はお互いを意識し合い、それぞれ違う政策を国民に打ち出そうと努めてきた。本研究では、政党間競争によって政権を担当する政党の政策の方向性が政策にどの程度違いを生じさせるのか探った。
事例研究の結果、(1)第二次自民党・公明党政権期は、第一次自民党・公明党政権期よりむしろ民主党政権期との政策の近似性が伺える。一方で、(2)さはさりながら、第一次自民党・公明党政権期と民主党政権期の政策の間にも差異が確認できる分野があることが分かった。(1)が環境制約によって、(2)が政党間競争によってもたらされたものかどうか、引き続き研究を進めていく。
2016年9月