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研究助成

成果報告

研究助成「地域文化活動の継承と発展を考える」

2014年度

地域ミュージアムの活性化とミュージアムを活かした地域振興

全国地域ミュージアム活性化協議会 事務局長理事
藤原 洋

(1)地域ミュージアムの課題
 当協議会は、市町村合併後の地域ミュージアムが財政の縮小や人材不足などによって厳しい運営を迫られ、中には閉鎖されるという状況に対し、その存在意義を高めていくことを目的として設立されたものである。
 地域ミュージアムが地域社会に貢献する視点としては、地域住民のアイデンティティの拠り所のほか、人的ネットワークの拡大と高度化、交流人口増加による経済的貢献、地域住民や関係者への理解促進、あるいは子どもたちへの教育面での貢献、活動参加による高齢者など福祉への貢献、情報提供を通した地域産業への貢献など多岐にわたる。


 

(2)先進事例調査とミュージアム・トリップの試行
 地域ミュージアムが地域社会に貢献するためには、それぞれ地域ミュージアムがその機能を拡大させることが肝要である。その事例を示すため、先進的な取り組みを改めて調査し、客観的視点から検証を行った。民間主導で行政や住民を先導し、町の姿をつくりあげていった長野県小布施町。開拓地に理想コミュニティを目指したポール・ラッシュの意志を継ぐ萌木の村(山梨県)。周辺の著名な観光地に埋もれた町から「和歌」による個性化で変化を遂げた古今伝授の里(岐阜県)。地域の歴史・景観・環境といった資源を住民が守り育てる運動を起こした愛媛県内子町。廃墟寸前の歴史的町を時間をかけて再生させた石見銀山・大森町(島根県)。複数の官民のミュージアムと地域をコーディネートする島根県奥出雲町。知的観光地を目指す鉄の歴史村(島根県)。これらの先進事例を共同研究者と共に、調査・検証を行った。
 また、共同研究者を含む各分野の専門家によってミュージアム・トリップを2泊3日の行程で試行し、テーマ性の可能性や仕組みづくりの過程における関係者の協力体制などについて討議を行った。


 

(3)研究報告
 2014年10月、ICOM(国際博物館会議)・ICR(地方博物館国際委員会)の年次総会において、当協議会の活動と研究の報告を行った。台湾で開催された会議では、各国の参加者が互いに研究報告とディスカッションを行うが、当協議会の報告には極めて高い関心を寄せられ、報告後には急遽、ボードメンバーとのミーティングが行われた。地域ミュージアムの地域における存在意義や、地域社会への貢献に関しては、国を超えた共通の課題であり、いずれもその開発に取り組んでいるところであることを認識させられた。今後、国際的な情報交流や共同研究も検討していく必要がある。


 

(4)地域ミュージアムの存在意義
 地域ミュージアムの存在意義を高めていくため当協議会が今後推進する活動は、①地域ミュージアムの魅力向上、②ミュージアムからの地域づくりの研究活動、③観光振興企画による集客・誘客、④相互の連携と補完、⑤機関紙などをはじめとする情報交流である。この活動を通して、第一に地域ミュージアムの価値を高めること、第二に地域ミュージアムに新しい機能を持たせること、第三にミュージアムと地域をつなぐコンシェルジュを育成することを目指していく。
 地域文化は、地域社会に対して、ひいては日本にとっても国際的にも、今以上に貢献できる可能性を有すると確信している。地域にこそ日本を表現する文化があり、地域ミュージアムには日本文化の付加価値を高める役割がある。そのことを実証する活動を、当協議会に加盟する会員の皆様と共に進めていきたいと考えている。


 

 


 

2015年8月


 

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