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研究助成

成果報告

研究助成「地域文化活動の継承と発展を考える」

2014年度

加賀藩関連資料を用いた近世日本食文化の総合的研究

東京大学総合研究博物館 技術補佐員
畑山 智史

(1)研究目的
 日本食文化の歴史を辿ると実際は、江戸時代においても文献史学のみからの指摘であり、関連領域である考古学等からの明確な議論がなされていない。その要因として、これまで考古学において、その分析主体が土器や石器等で、食物残滓である骨や貝などは注目されなかった点が挙げられる。我々は、この食物残滓に注目し、遺跡より出土した骨や貝の検討を実施し、得られた知見に基づいた近世食文化の解明を研究目的とした。


(2)研究の成果
①近世金沢の遺跡を分析し、その利用食材の一端を明らかにした。
 広坂遺跡の分析と整理作業、前田氏(長種系)屋敷跡、木ノ新保遺跡の再検討
②近世富山の遺跡を分析し、その利用食材一端を明らかにした。
 富山城下町(西町南地区)の分析
③「加賀食文化史研究会」を設立し、第1回研究会を開催した。
④動物考古学会で発表した。
⑤平成26年度京都市考古資料館・関西学生考古学研究会合同企画展
 「ここまでわかる考古学―学生が魅せる最先端―」で発表した。


(3)進歩状況
 概ね良好である。予定通り、動物考古学会で成果の一部を発表した。現時点での金沢の遺跡における食物残滓の概要は明らかにできた。ただし、未報告の資料は存在する。


(4)研究で得られた知見
①上級武士と下級武士の間で利用種や貝殻サイズの差異
②17世紀前半まで獣肉の利用 → 文献資料との矛盾
③文献によると17世紀以降は肉食が避けられていた。江戸でも同様の指摘がある。
④外洋に面した金沢に適した利用食材→チョウセンハマグリ、コタマガイ、イワガキの多用
⑤北方系貝類の確認 → 北前船由来か?
⑥旧久世家(文献によると乾物屋の庄屋)の時期に藻上に生息する小型巻貝類が多量に出土


(5)今後の課題
 金沢や富山の調査では、武家や町屋の食文化を考える上で重要な資料について分析ができ、その知見を得られた。だが本研究グループが想定した考古学と文献史学の総合的な分析は、不十分であり、今後の課題と言える。また当時の社会階層を考えると、大まかに武家や町屋に加え、公家が存在する。この公家の食文化についても理解することが日本食文化の解明に寄与すると考えられる。そこで我々は、公家の資料が唯一存在する京都市内の調査が必要と考えている。



2015年8月


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