成果報告
2014年度
学際的アクション・リサーチによる地域文化の復興プロセスに関する研究
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気仙沼の離島・大島における震災フィールドミュージアムの構築 ―
- 神戸大学大学院工学研究科 准教授
- 槻橋 修
1.本研究チームの活動背景および活動目的
本研究は、東日本大震災によって自然環境と地域社会が共に甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市の離島・大島を対象に、復興・再生に向けた事業や取り組みの政策及びまちづくりの提案、そして住民が合意に至るまでのプロセスに関する協力活動(アクション・リサーチ)を学術的なアプローチで行う。
2. 本研究チームの活動内容
①島民の情報共有・意見集約のシステムとしての
「大島のみらいを考える会」の継続開催
次々と更新される復興に関する情報の共有の場や、それらに対する島民の意見を集約する場として、住民参加型ワークショップ「大島のみらいを考える会」を大島地区自治会連絡協議会と連携して開催している。研究の特色として挙げている復興に向けた合意形成プロセスのアクションリサーチにおいて最も中心的な場であり、ここで集約された意見は、さまざまなツールで発信され、島内の議論レベルを引き上げる。
②情報格差の解消・集会の情報補完のツールとして「大島みらい新聞」の継続発行
大島の復興に関する情報や、集会の報告や予告を掲載した「大島みらい新聞」を毎月発行し、島民全体での情報共有や情報のアーカイブ化を目指し、継続的に制作している。島内全戸に配布しており、2015年7月までに28号まで発行されている。
③大島の空き地・耕作放棄地の再活用
気仙沼大島みらいチームでは、海とみどりのアートの島づくりを目指して、島民の家の庭先、空いている土地をお借りし、土地の再活用を行った。島民の方にお貸し頂いた土地、庭先に大島の竹で制作した龍の形をしたプランターを設置した。また島民の方に花の種を頂き、島民の方と一緒に植えた。
④島の背後地の利用を考えたエコ&アート
島民に愛される自然環境を中心に島の魅力の再発見や新たな創出を島民と共同で行うことを目的にしたエコ&アートプロジェクトを計画・実行した。今回は、津波の被害でその後使われていない土地に島の竹、廃材を使用した休憩所を設置した。
⑤島外の被災地とまちづくりの意見を交換する「三陸復興に向けたトークサロン」の開催
大島のみらいを考える会を数回重ね、島をより良くしようとさまざまなアイデアや想いを島内で共有してきた。その過程で考えたこと、学んだことを再認識し、今後の復興に活かせるよう、さまざまな議論・意見を整理・記録するトークサロンを開催した。今回は街の再興が本格化するにあたり街に人の賑わいをどのように取り戻すかなどについて阪神淡路大震災からの街の復興を経験したお二人をお招きしながらいかにして復興をなし得たのか、なにが足りなかったのかを聞きながら気仙沼野町の再興について発言していただきました。
3.今後の課題
復興までのプロセスに関するアクションリサーチとして、住民集会を中心に展開してきたが、参加者の減少、復興への意識の低下等が見受けられる。地域文化の復興や街づくりには、更なる参加層拡大に向けた集会を含めた活動スタイルの転換、より住民にに関心のある議題の設定、それらに伴う調査、ワークショップを進めていく必要がある。
2015年9月