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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2014年度

政権交代が政策の継続性に及ぼす影響に関する研究

政策研究大学院大学 教授
竹中 治堅

 本研究では2009年および2012年の二度の政権交代が日本の政策の決定方法や国内政策および外交・安全保障政策の継続性に及ぼした影響を探った。全般的に二回の政権交代を挟んでも決定手法や政策内容に継続性の強いことが判明した。
 まず政策決定方法について検証した。民主党は2009年に政権交代の後、政策決定方法の見直しを試みた。しかしながら、最終的には事前審査制を導入するなど決定方法は自民党に近いものとなっていく。自民党は政権復帰後、以前と同様の政策決定手法をとる。
 次に予算、税制、農業政策、電力・エネルギー政策、コーポレート・ガバナンスなど主に国内政策を比較した。
 予算全体で自民党政権と民主党政権を比較すると社会保障関連費用は基本的に増加を続けている。文教予算は民主党政権下で増大されたものの自民党の政権復帰後、微減傾向にある。公共事業費は民主党政権が大幅に削減され、自民党の政権復帰後、回復しているものの2009年以前の水準より低いままである。
 次に税制のあり方を比べる。民主党政権は消費税率の10%引上げを柱とする社会保障と税の一体改革を実現した。自民党は政権復帰後、予定通り消費税を8%に引上げたものの、2015年10月に予定された10%への引き上げは延期した。また、民主党は小泉内閣以来の課題であった法人税減税を実現し、自民党もこの路線を引き継いで、法人税の実効税率をさらに引き下げた。
 農業政策について、自民党は大規模経営化を推す一方、民主党はこの方針は採らなかった。一方、電力・エネルギー政策について見ると民主党は福島原発事故後、電力事業の自由化に着手し、自民党も政権復帰後この路線を継続する。また、民主党は当初、原発輸出に熱心であったものの、福島原発事故後、一時的に原子力発電への依存をなくす方向性を示す。しかしながら、最終的には原子力利用を続ける方針に改める。自民党も原子力発電への依存度は低下させつつ活用する政策を取る。最後に民主党政権はコーポレートガバナンスを強化するために会社法を改正し、社外取締役の導入を促す政策を推進する。自民党もこの方針を引き継ぎ、より強く促す方向で会社法を改正した。
 外交政策について見ると自民党政権は伝統的に緊密な日米関係が保つことを最重要視してきた。民主党政権の発足当初、日米関係は動揺する。だが次第に日米関係を重視する姿勢にも戻る。また、民主党は、自民党に続いてオーストラリアやインド、東南アジア諸国との関係を安全保障協力を含め、強化した。民主党政権は中韓両国との関係を強めることを試みるが、民主党政権末期に両国との関係は戦後最も悪いと言われるまでに落ち込む。
 安全保障政策では政権交代を挟んでも継続性が保たれることが多かった。民主党政権はPKO活動にも積極的姿勢を採り、ソマリア沖の海賊対策への自衛隊派遣も継続された。結果として戦後最大の自衛隊海外派遣が行われていた。さらに野田内閣の下で武器輸出三原則等が大幅に緩和された。これは自民党政権が行ってきた緩和策を拡充したものであった。民主党政権が策定した防衛大綱と自民党が政権復帰後に決定した防衛大綱にも継続性がある。ただ、集団的自衛権の解釈変更については小泉内閣から第一次安倍内閣、さらに第二次安倍内閣への連続性が強いことに注意する必要がある。
 今後の課題は自民党政権と民主党政権がそれぞれ形成した政策にどのような差異が探ることである。その上で、研究成果を出版物の形で公表することを目指したい。

 

2015年9月

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