成果報告
2014年度
日ロ関係史の新展開
- 法政大学法学部 教授
- 下斗米 伸夫
1.研究目的
日ロ関係の変化の予兆、とくに2011年3・11東日本大震災後の進展、そしてプーチン政権のアジア・シフトを背景に日ロ関係の改善が期待される中、しばしばボトルネックとなっている相互の歴史認識の対立・齟齬をパラレル・ヒストリーの手法でもって検討することで歴史和解を図る。
ロシア側A・トルクノフ国際関係大学学長と五百旗頭真防衛大学学長とが合意、民間レベルの歴史会議(日本側は富田武成蹊大名誉教授、戸部良一帝京大教授、下斗米伸夫法政大学教授が幹事)を日ロ間で行った。会議自体は12年秋盛岡、13年6月モスクワ、10月淡路島で会議を開催、以後執筆、翻訳、編集、出版が本助成の対象であった。
2.進捗状況
ロシア側20名と日本側17名の双方の代表的歴史、外交史、国際政治の専門家が参加、計34本の論文が執筆、翻訳を完了し、これを編集、出版する目的を有した。ロシア側は本年5月にパイロット版が出たが、日本側でも9月末に東大出版会から出版予定。ロシア語も本格版を同時期に刊行。英文、中国文も予定。
3.得られた主な知見
―1855年の下田条約締結の相互の国内事情、クリミア戦争、開国
―日本の近代化と対ロシア関係の相互関係、限界
―日露戦争はさけられる可能性があった
―日露戦争後の協商期は20世紀両国関係の最善の時期となった
―ロシア革命とシベリア干渉の複雑さが再検討された
―1925年の国交回復の推進要因が特定された
―30年代の両国関係の不安定さと不可侵条約の模索
―大戦中の中立条約と日ソ戦争の背景が示された
―抑留問題では双方で議論・史料交換がかみあった
―1950年代、冷戦と日ソ国交回復の関係
―デタント期のエネルギー面を含めた可能性
―ペレストロイカをつかみ損なった日本外交
―90年代の隘路
―21世紀の日ロ関係の可能性、
について、議論を踏まえたパラレル・ヒストリーの見解がちりばめられた出版が日ロ双方で可能となった。
2015年8月