成果報告
2013年度
二つの世界大戦と日本
―
対外危機と経済危機の観点から ―
- 関西外国語大学国際言語学部 准教授
- 片山 慶隆
[研究の目的]
本研究グループの研究目的は、第一次世界大戦および第二次世界大戦と日本との関係を、主に対外危機と経済危機の観点から捉え直すことである。もちろん、日本と両大戦との関わりを扱った研究は膨大に存在するが、研究の細分化が進んでいるがゆえに明らかになっていないことも少なくない。そこで、本研究グループでは、二つの世界大戦と日本との関係を総合的に理解するために、外交史・政治史・社会史・メディア史など、さまざまな分野の専門家が共同研究を行なう。
第一次世界大戦後の対外危機と経済危機は、なぜ克服できなかったのか。この大きな問題意識を共有しながら、日本の外交・政治・社会・メディアが戦争に至る道、あるいは戦争自体をどのように考えていたのかを、新たな角度から捉える研究を発表していきたい。
[研究の進捗状況]
本研究グループは、2012年9月に日本政治社会史研究会を結成し、研究会を開催してきた。そして、研究助成採用後第1回(通算第3回)研究会を2013年9月に成蹊大学吉祥寺キャンパスで開催し、町田祐一が「満州事変後の渡満者と職業紹介事業」、片山慶隆が「戦間期日本外交史研究の現状と課題―熊本史雄『大戦間期の対中国文化外交―外務省記録にみる政策決定過程―』(吉川弘文館、2013年)を題材にして―」を報告した。
2013年1月には、第2回(通算第4回)日本政治社会史研究会を成蹊大学吉祥寺キャンパスで開催し、茶谷誠一が「「終戦工作」における宮中の役割―木戸幸一内大臣の言動を中心に」、中谷直司が「日本外務省における「満蒙特殊権益論」の形成」を報告した。
3月には、第3回(通算第5回)日本政治社会史研究会を同志社大学今出川キャンパスで開催し、浜田幸絵が「永田秀次郎の国際認識―東京オリンピック、エスペラント、世界教育会議―」、島田大輔が「戦前期日本の中国専門記者の中国認識―太田宇之助を中心に―」を報告した。
7月には、第4回(通算第6回)日本政治社会史研究会を早稲田大学早稲田キャンパスで開催し、手塚雄太が「昭和戦前期における代議士と利益団体の相互関係―愛知県選出代議士加藤鐐五郎と陶磁器業界を事例として―」、片山慶隆が「正木ひろしの言論活動と国際認識―戦中期を中心に―」を報告した。この間、2013年10月には手塚が愛知、12月には片山が愛媛、2014年7月には浜田が東京で史料調査を行なっている。
本グループは、なぜ外務省が満蒙特殊権益にこだわったのか、また、なぜ宮中の終戦工作は1945年8月まで実らなかったのかといった、戦争の開始と終結に関わる重要なテーマで研究を進めている。さらに、この時期におけるメディアや政治家の活動の実態も明らかにしている。
今後は、史料の調査や分析で不充分な点を改善していく。また、通常の研究会だけでなく、2014年10月の日本政治学会研究大会分科会やゲスト討論者を交えての拡大研究会を開催することで、さらに研究を進めていく。そして、メンバー全員による論文集『二つの世界大戦と日本(仮題)』、および、片山慶隆『水野広徳』(ミネルヴァ書房)を刊行する予定である。
2014年12月