成果報告
2013年度
日本における情報ガバナンスの国際比較
- 慶應義塾大学法学部 教授
- 粕谷 祐子
研究進捗状況
本共同研究プロジェクトは、日本における情報ガバナンスを複数の側面から、および国際比較の観点から包括的に分析することを目的としている。最終成果物としては、英語の編集本を出版する。本プロジェクトは2013年から2015年の 3年にわたる共同研究であり、現時点(2014年8月)までの主な活動は、個々の共同研究者による論文の準備と、2014年1月に慶應義塾大学でおこなった2日間のワークショップである。以下、具体的に検討する情報ガバナンスの側面と、それを担当する共同研究者の分析内容概略を述べる。
・情報公開(粕谷祐子):日本の情報公開法は1990年初頭の政治状況の変化(55年体制の終焉)を契機として立法化されたが、内容的には弱い。
・選挙キャンペーン(ローリー・フリーマン):選挙運動の期間設定や運動内容の制限等、公職選挙法による政治情報の伝達が非常に強く規制されている。
・オープン•ガバメント(古賀崇):政府による積極的な情報提供によるオープン•ガバメントを通した透明性を高める試みが先進諸国・国際機関等で盛んになっているのに比べ、日本では未発達である。
・秘密保護(ジョエル・ルーベン):2013年に秘密保護法が拙速な形で立法化であり、セイフティ措置が欠落している。
・会計基準(加賀谷哲之):日本の会計基準が国際基準に準拠するようになったが、国際基準自体が多元化しており問題点も存在する。
・IT産業推進(櫛田健児):日本は技術的には高度なネットワーク構築をおこなったが、それ自体は情報産業の飛躍的発展につながらなかった。
・知的財産権(クリストフ・ラデマハ):1990年代以降企業の国際化、雇用の流動化を反映し、企業秘密のルールが発達した。
・プライバシー保護(川端英二):2000年代にプライバシー保護体制が限定的なものから、包括的な体制へと移行した。
・サイバーセキュリティ(土屋大洋):日本では縦割り行政による分断化され、予算・人員規模が小さい。
2014年3月に、メディア政策担当のデイヴィッド•マクニールと、(古賀が公文書管理にテーマ変更したため)オープン•ガバメント担当の渡辺智明があたらたに共同研究者として加わった。今後、2015年1月に第2回のワークショップを行って全体枠組みと個々の論文の擦り合わせや論点の整理をおこない、2016年中に編集本としての出版をめざす。
2014年12月