サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > 研究助成 > 助成先・報告一覧 > ミャンマー国の森林資源の潜在性に着目した地域特性考慮型・緑地評価システムの構築

研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2012年度

ミャンマー国の森林資源の潜在性に着目した地域特性考慮型・緑地評価システムの構築

九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
藤田 直子

 本研究は,最終目的である『地球温暖化緩和策に資する森林の潜在性に着目した地域特性考慮型緑地評価システムの構築』に向けて,研究を構成する一つの軸となる「ミャンマーにおける緑地の機能的側面に対する空間特性の解明」,「森林・国家政策・地域住民との間の空間及び制度上の相互関係の解明」,「住民と管理者による自然観や価値観と緑地利用の森林に対する意識の顕在化」の部分に着目したものである.本研究助成期間では特に,ミャンマーにおける緑地の機能的側面に対する空間特性や地域住民や管理者の価値観と森林資源利用に対する意識の特徴などを明らかにすることに重点を置いて調査研究を行った.
 ミャンマーは,近隣諸国と比べ高い森林保有率を有していることから地球温暖化対策や生物多様性保全の面で優位性を持ち合わせているにも拘らず,調査研究が困難な事などからその実態把握が遅れてきた。
 しかしながら,昨今のミャンマー国内外の情勢の変化をみると大きな転換点をむかえることが明らかであることから,出来る限り早期に研究調査に着手する事が重要であるとの認識のもと,本研究助成を基軸として共同研究を開始するに至った.
 本研究手法の軸である景観生態学的手法は、GIS(地理情報システム)やリモートセンシングの技術を応用しながらそこに対象地域の文化や歴史といった人間生活の変遷を組み込むことで、多様な発展形態を構築するという点に特色がある. 
 本研究助成期間を通じ,緑地の機能,地形的特徴,地域特性等の抽出・分類,GISによる地形図・植生図の解析,緑地としての空間配置上の特徴の解明などを行ってきた.
 ミャンマーにおける現地調査では,対象地域での植生調査の他,自然観や価値観に関するアンケート調査および聞き取り調査を実施した.聞き取り調査では,対象地域における緑地の機能,地形的特徴,文化的地域特性,対象地域における緑地関連の制度上の位置づけ,GISデータの公開および確認,対象地域における自然観や価値観などを調査した.
 その結果,本地域における緑地の機能・地形的特徴・地域特性,緑地関連の制度,緑地関連の制度に対する住民の意識,本地域におけるGISデータの信頼度の程度,自然観の把握,緑に対する価値観などを把握する事が出来た.
 今後は,日本国内にて調査データを分析するとともに,空間データの解析を進める予定である.本研究成果によって、ミャンマー国における森林緑地の実態とそれらに対する地域住民意識の顕在化が図られ、ミャンマー国における望ましい森林形態の構築やそれに関わる持続可能な社会の構築に寄与することが出来ると考えられる。また,本研究ではミャンマー国内の研究者にGISやリモートセンシングといったコンピュータを用いた空間解析技術を紹介する事もひとつの目的であったため,今後も技術提供等に関しても進展を図りたいと考えている.

2013年9月

サントリー文化財団