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研究助成

成果報告

人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成

2012年度

南スーダン共和国独立後のスーダン・南スーダンにおける国内避難民に関する国際的学際的研究

大阪大学グローバルコラボレーションセンター 特任助教
安藤 由香里

 本研究は、法的・社会開発的な視点から、スーダン・南スーダンにおける国内避難民について、分析することを目的とした。具体的には、2011年7月9日の南スーダン独立後も、国内避難民がスーダン・南スーダンで増加する中、アフリカ連合国内避難民条約がスーダン・南スーダン社会においていかに影響するか。現地の伝統、慣習、国内法とどう関係するか。紛争後国における持続可能な生活手段を築く経済発展との関連ではどう対処するか。既存の伝統的社会とどう調和するかの点につき、2012年8月以降、日本・カナダ・ドイツ・米国の研究者間で、月1回のスカイプミーティングを実施した。その中で、スーダン・南スーダンの状況悪化により現地調査を延期し、第三国での対話を設定するように方向転換することが最良であると判断した。その結果、2013年7月3日から5日に、カナダのトロントに位置するヨーク大学難民研究所にて「スーダン・南スーダンシンポジウム」を開催した。第一日目は、アビエ出身の国内避難民に関する国連事務総長特別代表でもあったフランシス・デン氏に基調講演をお願いした。第二日目は、各国で研究者となっているスーダン・南スーダン出身の関係者のみの非公開とし、スーダン・南スーダンの国内避難民に関する解決方法について討論を行った。第三日目は、総括を行った。
 今回のシンポジウムで注目されたひとつはメディアの役割であった。特に、多くの人がアクセスできるラジオを通した、啓発活動、人材育成、とりわけ、女性ジャーナリストの人材育成に関心が集まった。また、貧困の悪循環を断ち切るために、アントレプレナーシップも注目されており、日本の経験が役立つかもしれないという意見があがった。
 エジプトのクーデターのため招聘者が現れないというハプニングもあったが、カナダ、米国や他国からスーダン、南スーダン出身者が多数集まり、このようなシンポを定期的に開催してほしいという要望が非常に多く、好評のうちに幕を閉じた。
 スーダン・南スーダンの両国における石油の利権争いおよびアビエ問題もあり、国境沿いにおける武力衝突をはじめとして、スーダン・南スーダンの関係が悪化を続けている。また、スーダン・南スーダンの双方において「人権」に関連すると政府に疑われる調査は非常に繊細な問題となっており、国連人権オフィサーが南スーダンから国外退去させられる等、現地調査が非常に厳しい状況となっている。しかし、そのような状況であるからこそ、国内避難民問題の解決に向け、国際社会等、第三者の役割が求められているのが現状である。
 末筆ですが、本助成によってスーダン・南スーダン研究の促進およびネットワーク構築ができました。研究代表者として、貴財団の温情に厚く御礼申し上げます。

2013年9月

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