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研究助成

成果報告

2011年度

旧東欧地域における「演歌型」大衆音楽の生成と展開

大阪大学大学院文学研究科教授
伊東 信宏

 サントリー文化財団の研究助成による研究課題「旧東欧地域における「演歌型」大衆音楽の生成と展開」2011年度の研究成果についてご報告いたします。
 本研究課題は、1989年の体制転換以降、旧東欧諸国に起こった文化現象のうち、特に「演歌型」大衆音楽ともいうべき新ジャンルの登場に焦点をあててその比較研究を行おうとするものです。「演歌型」大衆音楽とは、1)欧米のポップスの基本語彙であるベース&ドラムスを基礎としながら、2)発声、歌い回し、楽器法などの点で、民俗音楽の要素を暗示しつつ、3)テレビやカセットテープといった媒体により大衆に浸透したジャンルで、ブルガリアの「チャルガ」、ルーマニアの「マネレ」、旧ユーゴスラヴィアの「ターボフォーク」などがその代表といえます。
 2011年度においては、まず研究会を8月、11月、2012年5月の3回にわたって開催し、のべ4名が報告し、2件について議論を行いました。ここで特に注目すべき知見は、輪島裕介氏によって提起された大衆音楽の発展段階の比較、および上畑史氏が論じたセルビアにおける「ターボフォーク」の歴史と、クララ・フルヴァティン氏によるリュブリアナにおける「ターボフォーク」の状況との相違などです。
 また今後の研究の準備として、調査票を用意し予備調査を実施しました。これについては第3回研究会において、代表者伊東が簡単な集計結果を報告しております。
 これらの議論をふまえたうえで、今年度はチェコ(プラハ)、セルビア(ベオグラード)、スロヴェニア(リュブリアナ)で調査を実施しました。これらは家田恭、上畑史、クララ・フルヴァティンによってそれぞれ3〜6週間程度の規模で行われました。その成果の一部はすでに上記研究会においても報告されています。
 また本年度は、この研究の立ち上げの年にあたり、他の研究資金の獲得にも力を入れました。その結果として、科学研究費補助金(基盤B)科研「旧東欧地域における『演歌型』大衆音楽の比較研究」(2012-15年度、2012年度は270万円)が採択され、すでに本研究課題と並行して研究が進んでいます。今後、本研究課題と有機的に組み合わせて、一層充実した研究を行うつもりです。
 2012年度においては、引き続きブルガリア、ルーマニアなどで調査を続けるほか、民族藝術学会例会における小シンポジウムの開催、セルビアにおける国際会議への参加などを計画しています。

2012年9月

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