成果報告
2010年度
ブルーノ・タウトと日本についての総合的研究
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「日本関連タウト資料目録」作成を中心に
- 東京造形大学教授
- 沢 良子
「岩波書店所蔵・ブルーノ・タウト遺品および関連資料」(以下、岩波タウト資料と省略)目録作成に関する報告
岩波タウト資料目録は、日本学術振興会科学研究費の助成終了後、2009年から貴社助成を得て、全資料の撮影、分類別資料目録に画像データをはめ込む作業を進めた。日本語版についてはほぼ完成し、この目録のドイツ語版についてはM.シュパイデル氏と共に進めている。
ベルリン・芸術アカデミーが所蔵する「日本関連タウト資料」についても調査を進めているが、この点については稿を改めたい。
以上の目録をもとに、2010年12月および2011年6月に、公開勉強会を開催した。
勉強会では、研究グループが次の題目で報告をおこない、勉強会参加者と共に検討を加えた。
(1)「タウトの日記」スケッチによる、タウトの日本での視覚検証の可能性について
沢 良子報告
タウトに日記は、「絵日記」といっても良いほど、多数のスケッチが描かれている。このスケッチを通して、タウトが日本にみたものを検証できないか。
(2)タウト撮影の写真アルバム台紙に書き込まれた文言の解読について
酒井道夫報告
タウト撮影の写真については、『タウトが撮ったニッポン』(酒井、沢ほか共著2007年)にまとめたが、アルバムの調査段階で、タウトがアルバムに書き込んだ文言が、写真の特定などに大きな意味を持つことが判明した。
(3)日本美術評価に対するタウトの言説の影響について
星野 鈴報告
『日本文化私観』(1936年 Japans Kunst- mit europäischen Augen gesehen )をはじめ、タウトは玉堂、鉄斎など、近世から近代にかけての日本美術に多々言及しているが、現在の日本美術評価にタウトの言説があたえた影響を検証する必要があるのではないか。
以上の報告について、検証のための方法論や可能性について活発な議論が交わされた。今後も、本研究グループの研究課題として取り組んでいく予定である。
岩波タウト資料については、科研報告書(2007年)の未定稿目録をほぼ完成させることができた。この目録をもとに、将来的に岩波タウト資料目録が公開される予定である。日本でのタウトに関する1次資料目録が明らかになることによって、国内外のタウト研究者に新たなタウト研究の可能性を開くものと考える。
(2011年9月)