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研究助成

成果報告

2009年度

ロシア経済の多様化と対ロ直接投資

一橋大学経済研究所教授
久保庭 眞彰

 今年度は、2009年リーマン/オイルショック後のロシア経済の動向を踏まえて、ロシア経済多様化と対ロ直接投資の基礎条件について再検討を行った。
(1) 石油・ガスの輸出と価格変動に依存するロシア経済の状況を時系列解析により明らかにすることを試みた。特に、資源依存経済から技術立国経済への目指して進められてきた多様化政策が資源依存にする多様化という状況に陥っていることを明らかにした。オランダ病の徴候である、油価上昇による製造業成長衰退は、ロシア経済にはみられなかったが、油価上昇のもとでしか製造業成長と多様化、そしてまた対ロ直接投資が発展しえないという「ロシア病」の徴候が強く見られることを時系列回帰分析により明確にした。
(2)油価変動の問題を国民経済計算の交易利得と国内総所得GDIの枠内で解明することを試みた。国際比較を重視して、BRICs、産油国(ノルウェー、サウジアラビア)、日米と比較しつつ、この作業を行った。
(3)ロシア経済における石油・ガス産業、鉱業の位置(GDPシェア)を公式統計の再編成により明らかにした。同時に、ロシアにおける製造業の位置と重要性を産油国(ノルウェー、サウジアラビア、アゼルバイジャン等)と日本との比較で計量的に明らかにした。
 以上の研究成果は、2本の論文として2010年7月に公刊された。
「ロシア病(Russian Disease)」の病理と診断:成長と構造の再検討」『経済研究』61(3、pp.261-285、2010年7月。
「ロシア経済の産業構造とスカイラインチャート」『ロシア・ユーラシア経済』No.936、pp.2-14、2010年8月。
 また、2010年7月末のICCEES国際スラブ学会(ストックホルム)において報告(”Growth and Structure of the Russian Economy: Diagnosing ‘Russian Disease’”)は、海外参加者から大きな関心を集めた。
2010年9月
(敬称略)

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