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研究助成

成果報告

2009年度

市町村合併後の住民・行政および企業・NPOの協働に関する研究調査

明治大学政治経済学部教授
牛山 久仁彦

 「平成の大合併」による自治体再編成は、市町村の大規模化による行政マネジメント能力の向上と、その反面生じる、住民自治の低下という課題をはらむ。本研究は、そうした中、合併自治体における地域自治の強化と協働への取り組みがどのように展開されているのかを調査・研究することを企図したものである。市町村合併は、自治体の大規模化を促し、多くの「大都市」を誕生させた。政令指定都市や中核市、特例市といった大都市特例を適用される自治体も増加し、それゆえに住民自治の強化や協働による公共サービスの提供という課題に直面せざるをえない。住民から「遠い自治体政府」が生まれることは、地方自治の実質を弱め、分権改革の意味を減ずることになりかねないからである。
 そこで、多くの合併自治体で取り組まれているのが、地域自治区や合併特例区の設置と運営であり、また、住民との協働による行政経営である。今回の調査では、「平成の大合併」の中で合併を果たした大都市を対象としたアンケート調査を実施し、9政令市、27中核市、20特例市に調査票を送付した(合計56自治体)。その結果、7政令市、27中核市、16特例市から、回答を得ることができた(合計46自治体、回収率82.1%)。このうち、地域自治区や合併特例区を設置した自治体は一割強と少数にとどまったが、法定外の制度や地域審議会を活用した自治体は半数近くにのぼる。そこに設置された住民の協議会等では、地域課題の解決や姿勢に対する提案・要望が行われている他、市長からの諮問に応え、住民意見を自治体運営に反映しようとする姿勢が見える。その一方で、住民の関心の低さや、町内会・自治会との連携などについては、課題も指摘されている。
 また、合併後の自治体づくりの中で、協働施策にどのように取り組んでいるかについては、市民活動サポートセンターや活動拠点の整備、情報共有、市民活動団体の登録などを行っているとの回答が多く寄せられた。こうした施策を行っていない、と答えた自治体は皆無で、合併後のまちづくりに協働施策が不可欠となっていることがわかる。住民との協働事業については、回答を得られた全ての自治体で実施しており、合併後に協働施策が前進したと答えた自治体が半数近くにのぼる他、合併後に協働に関する条例を制定したものも4割近くとなる。協働の担当課を設置している自治体は9割近くを占め、そのうち、3割程度が合併後に設置されたものである。
 この他、何らかの形で、協働の担い手に対して金銭的な支援を行っている自治体は全体の9割に達し、全ての回答自治体で、研修など職員の意識改革に取り組んでいるという答えが得られた。こうした結果から、合併を果たした大都市自治体では、地域自治の強化やNPOや企業との協働に取り組む姿勢や具体的な動きが見られる。こうした取り組みが本当の意味で自治を強化し、分権型自治体経営に資する実態をもつのかという点では、さらに詳細な分析を進める必要がある。今回の研究の成果をふまえ、今後の研究を進める中で、それらについても明らかにしていきたい。
2010年9月
(敬称略)

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