成果報告
2008年度
譜代大名家旧蔵の近世絵図からみる大坂城代の姿
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篠山藩青山家文書における新出資料の分析から
- 甲南大学文学部准教授
- 鳴海 邦匡
研究の成果および進捗の状況
本研究で主に扱う資料は、篠山市教育委員会所蔵の「篠山藩青山家文書」に含まれる絵図資料のうち、大坂を中心とする地域を描いた絵図となっている。それらの絵図は、主に17世紀後半の時期に作成され、大阪湾岸や淀川などの河川筋、また、大坂城周辺を描いた肉筆の図で構成される。これらの大坂周辺の絵図は、当時、大坂城代をつとめた青山宗俊を通じて集積され伝存したものと考えられ、ほかに類例をみない貴重な資料を数多く含むと評価される。
これらの絵図はほぼ未整理の状態で発見されたものの、料紙や附箋の剥離が著しく、そのままでは調査が困難であるばかりか、緊急に修復して紙を固定しなければ散逸してしまう状況が明らかとなってきた。そこで、本研究助成を活用し、資料の散逸を防ぐ目的にそった応急的な修復を実施した。資料の修復は元興寺文化財研究所が担当している。この修復作業により、資料調査のために問題なく絵図を開披することが可能となり、ようやく本格的な調査が可能となった。
本研究を通じて得られた成果については、学会、および雑誌などで報告を行うほか、対象とした資料の基本的な情報を提供する目的で目録の整備を行った。それらの研究成果は以下の通りである。
目録
・鳴海邦匡・上田長生・大澤研一編著『篠山藩青山家文書絵図目録:近世前期大坂周辺絵図』、
2009年7月
雑誌
・上田長生・鳴海邦匡「篠山藩青山家文書にみる大坂城代時代の絵図―概要の紹介―」、『大阪の歴史』72、pp.39-57、2009年1月
報告
・鳴海邦匡・上田長生「大坂城代と絵図-篠山藩青山家文書の事例を中心に-」、2008年度人文地理学会(筑波大学、2008年11月9日)
・鳴海邦匡「篠山藩青山家文書の絵図にみる畿内の河川整備事業」、第3回 新「尼崎市史」研究会(尼崎市中央地域振興センターコミュニティホール、2009年7月10日)
研究の課題と今後の予定
本研究で対象とした資料の調査は、応急的な修復作業を終え、ようやく開始できる段階に到達したばかりである。これらの絵図は、近世前期における大坂周辺における治水・新田開発事業の実態や、大坂城代の実像などをみていくうえで基本的資料となるものと評価され、それらを明らかにしていくことが今後の研究課題となる。
現在、これらの絵図資料を素材とした資料集の刊行、および博物館展示の準備計画を進めている段階である。今後、本格的な調査を実施し研究を進めるとともに、これらの計画を実行していくことがこれからの予定となる。
2009年8月
(敬称略)