成果報告
2007年度
東アジアの国際関係をめぐる言説分析
- 東京大学東洋文化研究所 准教授
- 玄 大松
本助成研究「東アジアの国際関係をめぐる言説分析」においては、第一に、言説分析の分析手法、方法論について検討し、第二に、歴史的に、日本の政策決定者がどのような国際関係認識をもっていたのか、を解明するのが目的であった。
まず、分析手法、方法論の検討については、総理大臣の国会演説の分析を通じて、名詞の延べ語数(全語彙の数) に対する相対頻度を計量することで、特定の政治的概念への関心が計量的に分析可能であることを示した(成果[1])。さらに、政治テキストの文体に与える影響要因が何かを探索的に調べた(成果[2][3])。
また、日本の政策決定者の国際関係認識に関しては、総理大臣の国会演説の計量分析によって、歴代の内閣がどのように対外関係を認識してきたかを明らかにした。より具体的には、東西問題と南北問題の言説に着目し、日本の対外認識は、東西問題・安全保障軸では、対米追従型であるものの、南北問題・援助軸では、独自性が高いことを、明らかにした。
今回の助成においては、時間と予算の制限で、日本の総理大臣の国会演説を材料にトピックも限定されたものに止まってしまった。今後の課題としては、より体系的かつ包括的に戦後日本の対外認識を明らかにするべく、地域/国への関心についての分析を進めたいと考えている。加えて、今回、十分検討できなかった、韓国、中国における国際関係言説の分析を進めていくことにしたい。
助成による研究成果
[1] Takafumi Suzuki and Kyo Kageura. Exploring microscopic characteristics of Japanese prime ministers’ Diet addresses by measuring the lexical quantity and diversity of nouns. In Proceedings of PACLIC 21, The 21th Pacific-Asia Conference on Language, Information and Computation, 2007.
[2] Takafumi Suzuki and Kyo Kageura. Stylistic analysis of Japanese prime ministers’ Diet addresses. In LKR2008, The 3rd International Conference on Large-scale Knowledge Resources, 2008.
[3] 鈴木崇史・影浦峡「総理大臣国会演説における基本的文体特徴量の探索的分析」『計量国語学』26(4), 2008, pp. 113-122,
2008年9月
(敬称略)