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研究助成

成果報告

2007年度

高学歴女性のキャリア形成支援に関する国際比較研究

早稲田大学文学学術院 教授
嶋﨑 尚子

1.本研究の目的
 女性のキャリア形成支援については、文部科学省をはじめ喫緊の課題として取り組みが始まっている。申請者はこれまでこの領域における基礎的データ収集ならびに支援事業策定に関わってきた。そのなかで、女性のキャリア形成過程が、家族形成期における家族状況のみならず、個々人のキャリア志向性や能力によって大きく異なることが明らかになっている。とりわけ高学歴の場合には、初期のキャリア形成局面と結婚・出産時の就業継続ならびに中断後の再就職局面における連続性の確保がキャリア形成上の困難の主要因となっている。
 一方で、この点は日本に限らず、EU、北米でも問題認識を共有している。少子高齢社会をむかえ女性の労働力参加の必要性は改めていうまでもないが、とりわけ高学歴女性の能力を活用することの社会的意義は大きい。本研究は、そのための支援策をキャリア形成過程に着眼して提示することをめざしている。

2.研究概要
  本研究では、以下3種の調査によるデータ収集ならびに結果の検討と、EU、北米研究者との情報交換・キャリア形成支援策の検討を、社会学を中心に社会政策・社会福祉、産業心理学、教育学等の関連領域との共同作業をとおしてすすめてきた(研究活動欄参照)。
(1)1980年代にキャリアを開始した大卒女性のキャリア・カレンダー調査
(2)若手女性研究者のキャリア形成上の困難に関する調査
(3)大卒主婦の職業意識に関するインタビュー調査

3.研究成果
(1)岩上真珠「日本における成人移行期のパターンの変化 -1990年代以降の若者の経験」European research Network in Transition in Youth 第15回ワークショップ 2007年9月5日〜8日:ゲント大学
(2)嶋﨑尚子・笹野悦子・小村由香「アカデミック・キャリア形成の現状 -多様性と格差の課題」『社会学年誌』49(2008年3月刊行)
(3)イト・ペング「多様化社会の社会政策 -カナダにおける移民のスキル活用と格差是正にむけて」『社会学年誌』49(2008年3月刊行)
(4)嶋﨑尚子『企業社会の変動とライフコース』(2009年3月刊行予定)

4.課題
 2007年度に実施した3種の調査ならびにEUでのワークショップでの意見交換、3本の研究論文(嶋﨑、岩上、イト・ペング)は、高学歴女性のキャリア形成支援に関する基礎的情報の収集とその概括的検討であった。今後は、(文部科学省科研費の助成を受けて)引き続きその成果をより具体的な政策提言へ展開するべく、これまで収集してきた調査データを用いた検討を進めていく。

2008年10月
(敬称略)

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