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研究助成

成果報告

2007年度

大型店によるまちづくりの可能性に関する研究
― 心斎橋筋および清水町通りの事例から

関西学院大学商学部 教授
石原 武政

 大型店はこれまで、自らの取扱商品数を拡大し、提供するサービス内容を広げることによって、店舗内部の完結性を高め、さらに、多店舗展開することによって発展してきた。その大型店が店の外部に目を向け、まちづくりを行うことが果たして可能であろうか。本研究の目的は、これまでほとんど検討されることがなかった大型店によるまちづくりの可能性について、具体的な事例や実際の大型商業集積開発担当者のインタビューを通して考察することであった。
 本研究を通じて得られた知見は大別して以下の2点である。第一に、大丸心斎橋店周辺店舗部のような取り組み、すなわち百貨店の売場が周辺地域に浸出しながらまちづくりを推進しようとする試みが、心斎橋筋や清水町通りだけでなく全国的に求められていることが確認されたことである。大丸心斎橋店は、心斎橋地区の相対的な魅力低下に伴って減少していた来店客数を増大させるため、店舗の周辺を開発し、店舗との回遊性を高めようと企図してきた。しかも、周辺店舗の開発に際しては、大丸はもちろん、地権者や出店者、さらには消費者の便益が確保できるようなビジネスモデルを創出した。その結果、周辺店舗部の活動は大丸心斎橋店の利益の創出に貢献しているばかりでなく、周辺地域の店舗構成やまちの雰囲気の維持に寄与している。大丸心斎橋店のこうした取り組みの原型は、大丸神戸店の旧居留地店舗に見られるが、ここではそれがより意識的に追求されている。
 このような大型店によるまちづくりが要請されるようになった背景には、中心市街地の疲弊が影響している。つまり、これまで中心市街地のにぎわいを支えてきた商店街の景況が悪化し、商業地のまちづくりが思うように進んでいないため、中心市街地に立地する大型店、とりわけ百貨店への期待が高まっている。他方、中心部に位置する百貨店も、まちの疲弊に比例するように売上高を減少させてきたため、まちを活性化させることが百貨店の売上改善につながることが強く認識されるようになった。それが、大丸心斎橋店のような取り組みが注目されている要因である。
 第二に、大丸心斎橋店のような方法だけが大型店によるまちづくりではないということを、鶴屋百貨店の事例を通して認識できたということである。鶴屋百貨店のような地方百貨店は、地域の一番店であり、地域の中で求められる役割が以前から非常に大きかった。そのような状況下、鶴屋百貨店は地元の有力企業として市街地再開発を進め、それを通して自店の売場面積の不足を解消させてきた。つまり、周辺店舗の開発は、地域と一体となって再開発事業を進める過程で行った試みであり、新規商業集積の形成によってまちをつくっていこうとする限りでは、ショッピングセンターの手法と基本的には同じだといってよい。その意味でも、大丸心斎橋店の取り組みは、大型店によるまちづくりに新たな手法を提示しているといえよう。
 ただし、残された課題もある。たとえば、すべての大型店が大丸心斎橋店と同じ手法でまちづくりを行えるわけではない。また、本研究によって、大丸型のまちづくりが成立する条件を精緻化できたわけではない。それらについては、今後の各人の研究課題としたい。

2008年8月
(敬称略)

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