サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > 研究助成 > 助成先・報告一覧 > 匠業都市の研究

研究助成

成果報告

2006年度

匠業都市の研究

武庫川女子大学生活環境学部教授
三宅 宏司

 都市の呼称として、これまで商業都市、工業都市、集散都市、消費都市、金融都市など多くが登場してきた。この研究でわれわれは、「匠業都市」を提唱する。
 ここでいう匠業都市は、工房型都市である。特にわが国のように、資源やエネルギーの乏しい国が目指すべき一つの近代国家の様相としてふさわしいと考える。歴史的にみて、われわれの思い描く匠業都市に重要なヒントを与えてくれるものがあることは当然に予測がつくところである。また、現在の諸外国においてもその先鞭をつけている都市があることも予測できるところでもある。匠業の内実は、在来型の伝統的手工業に加え、それらを発展的に現代の産業や技術を支える重要な部分をになうもの、最先端科学技術の基底部を構成するもの、日常生活に一般的に使用されるものなど、さまざまな様相として我々の身の回りに必要不可欠なものから潤い、余裕、幸せ、喜びなどをもたらしてくれる多くの品々やアイディア、価値を生み出すものにつながる。単に“モノ”を作り出すだけでなく、考え、創作、付与するというような人間行為のトータルな創造行動を包含する“匠”業を都市が持つべき近未来の一容姿ととらえたい。
 当研究会で、都市のあり方、都市の形成、都市の変様、都市の内実などを論議してきた。研究会メンバーに、都市計画、環境工学、建築、産業と技術などの専門研究者をむかえ、各々の立場から諸問題を提出し合った。また、限定的ではあるが、国内外の地域・都市のフィールド調査を行った。ピラミッド型人口構成から人口増加の無い平準型となったわが国の近未来に活力をもたらしてくれる一つの有効モデルとして、匠業都市の外郭線を引く作業が端緒につけることが可能となった。
 現在、各研究者は作業成果の取りまとめを行っており、11月末を目途に、それらを報告書として印刷する予定である。


(敬称略)

サントリー文化財団