成果報告
2006年度
東アジアにおける「日本発アニメ・デジタルコンテンツ」の受容とその展開に関する比較文明論的研究(2)
- 関西学院大学大学院社会学研究科教授
- 奥野 卓司
2006年度は、前年度の「日本発アニメ・デジタルコンテンツ」の受容とその展開に関する比較文明論的研究(1)に引き続いての研究活動を行った。その際、(1)においてはその「受容」に重きを置き、(2)においてはその「展開」に重きを置くことで、研究における継続性・発展性を得ようとした。
研究活動は、研究合宿と実態調査がその2本柱であった。前者については、2006年9月に「研究進行に関しての合宿」、2007年1月に「研究の中間的とりまとめに関しての合宿」、2007年7月に「研究のとりまとめに関しての合宿」、というように3回の研究合宿を行った。後者については、2006年10月に「国立劇場実態調査」、12月に「天満天神繁昌亭実態調査」、2007年5月に「フィールドワークや中心人物へのインタビューも含めて、「「小松こども歌舞伎フェスティバル」実態調査」、6月に「「こんぴら歌舞伎」実態調査」をそれぞれ行った。この実態調査以外にも、研究メンバーは各自での実態調査を積極的に行った。
主な研究成果としては、研究代表者(奥野卓司)による『ジャパンクールと江戸文化』(岩波書店)をあげることができるだろう。以下にその目次を示すことにする。
第1章 ジャパンクールからみえる江戸文化
第2章 コミュニティを再生する江戸文化
第3章 ジャパンクールとしての江戸文化
第4章 江戸文化の「モエ」の構造
第5章 京都・大坂・名古屋のコンテンツ戦略
第6章 江戸という近未来
目次からも分かるように、アニメ・デジタルコンテンツに代表される「ジャパンクール」を手がかりにして、過去と現在と未来の日本文化を考察したのが上掲書である。そこでは、歌舞伎、文楽、落語等を題材にし、江戸、京都、大坂、名古屋をフィールドワークすることを通して、わが国における情報産業の未来像も描いている。
今後の研究の方向性としては日本の伝統文化のコンテンツと中国の京劇、イギリスのシェイクスピア劇との比較研究とともに、日本のそれが、今後デジタル化されることでどのように世界に伝播していくか、実態調査を中心とした研究を深化させていきたい。
また、研究代表者以外の成果としては、主なメンバーである寺岡伸悟(奈良女子大学)と工藤保則(龍谷大学)の両名が、『現代文化の社会学入門』(小川伸彦・山泰幸編、ミネルヴァ書房)に、研究成果を発表している。
(敬称略)