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研究助成

成果報告

2006年度

日中間安全保障対話
― アジアの安定と平和を目指して

NPO法人岡崎研究所理事長
岡崎 久彦

 本研究の目的は、中国を代表する研究機関である中国社会科学院日本研究所及び上海国際問題研究所とNPO法人岡崎研究所との間で、日中両国が直面する諸問題及び懸案事項について率直な意見交換を行って相互に理解を深め、アジアの安定と平和に資することです。ところで、岡崎研究所は、組織或いは資本面でも完全に独立した研究機関であることから、その価値判断の基準は、あくまでわが国の国益であり、主務省庁やスポンサー等に遠慮することなく率直に発言できることが最大の強みです。2006年度の対話は、中国側を東京に招いて行いました。対話の相手である中国社会科学院は、中国政府国務院直属のシンクタンクとして政策決定に強い影響力を持ち、一方、上海国際問題研究所は、上海市直轄の地方政府系の研究機関ではありながら、江沢民前国家主席ら上海出身の指導者グループに直結した政治的影響力の極めて大きいシンクタンクです。
 このような政治的に異なった系統に属し、地理的にも離隔した2つの研究所との対話によって、岡崎研究所としては、双方にそれぞれ自国の主張を直接伝えることが出来る上に、相手側の主張の相違や共通点を知ることによって、中国における政治の流れや軍の動静などを判断することも可能となります。
 2006年度の対話において討議されたテーマは、日中間の懸案事項やその時点での両国の関心事項を中心に、両研究所間の調整で決められたものです。
 2006年10月、東京で行なわれた中国社会科学院日本研究所との対話では、安倍内閣の発足による日中関係への影響と今後の見通し、台湾情勢の見通し、北朝鮮の核開発問題、北東アジアのエネルギー問題、東シナ海問題と日中の海洋協力といった幅広い諸問題について歯に衣を着せない率直な意見交換が行われました。この対話を通じて、安倍首相の登場によって改善された日中関係に対する中国側の素直な安堵感、東シナ海問題に対する中国側の微妙な姿勢変化、北朝鮮の核開発問題に対する中国の消極姿勢、不透明さの残る党と軍の関係、台湾問題に対する中国の一貫した強硬姿勢等の事項が目立ちました。
 2007年3月、東京で行なわれた上海国際問題研究所との対話では、日中間の戦略的互恵関係の構築、現在及び将来にわたり中国に期待する事項、日中間の政治・軍事的信頼関係の醸成といった3つのテーマについて意見を交換しました。
 日中間安全保障対話を通じて、日中双方が自国の意図を詳細に説明すると共に率直な意見交換を行うことは、相互の理解を確実に深め、アジアの安定と平和に貢献できるということを確信できました。この点に関して、中国側からも全く同じ意見が表明されました。

(敬称略)

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