成果報告
2005年度
民主主義と安全保障
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アジア国際政治のダイナミズム
- 明治学院大学国際学部教授
- 竹中 千春
21世紀の国際政治の重要な課題は、「民主主義と安全保障」の両立である。市場経済の拡大にそって人・金・モノ・情報のグローバリゼーションが進行し、「民主主義と安全保障」という課題を、各国政府「一国主義」に頼って解決することはほぼ不可能となっている。本研究では、こうした時代状況の下で、(1)アジア各国の国内政治と(2)アジアの国際政治を分析し、(3)国内政治と国際政治の間にある「民主主義と安全保障」という課題について、学術的な成果とともに実践的な政策提言をめざした。
具体的には、世界政治学会(International Political Science Association, IPSA)との共同開催となった2006年度日本政治学会研究会で、以下のようなプログラムで国際シンポジウムを開催した。午前の部では「安全保障」を広くとらえて暮らしの「安全」や社会的弱者の「安全」をも考察し、午後の部では、民主化への胎動をはらむ東アジアで「安全保障」と国際平和をどう構築するか、誰がそれを担うか、を考察した。
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2006年度日本政治学会研究会
「民主主義と安全保障――日本と東アジアから考える」
(Democracy and Security in Japan and East Asia)
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2006年7月9日(福岡国際会議場メインホール)
午前の部:「民主主義は市民社会を守るか」(9:30-12:00) 司会: 杉田敦教授(法政大学)
パネリスト: テッサ・モーリス=スズキ教授(オーストラリア国立大学)
新川敏光教授(京都大学)
斎藤純一教授(早稲田大学)
酒井哲哉教授(東京大学)
午後の部:「民主主義は国際平和をつくるか」(14:00-16:30) 司会: 下斗米伸夫教授(法政大学)
パネリスト: 明石康大使(日本政府代表・スリランカ平和構築及び復旧・復興担当)
毛里和子教授(早稲田大学)
栗栖薫子助教授(大阪大学)
藤原帰一教授(東京大学)
海外からの研究者を含むパネル・ディスカッションを日本語で行い、英語の同時通訳を提供してIPSA参加者を招き入れる体勢を準備した。IPSAは「民主主義は機能しているか」を共通テーマに組織されたが、それを担当した企画委員長イヴォンヌ・ガリガン教授(アイルランド)からの暖かい挨拶もいただいた。また、参加した多くの研究者も真剣に報告に耳を傾け、一日の議論を高く評価してくださった。総括すれば、本プロジェクトによって、世界的な学術拠点としての日本の力を示すとともに、アジアを中心とした国際的な学術交流を十分に実践できたのではないか、と考えている。
(敬称略)