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研究助成

成果報告

2005年度

ヴォランティア活動の教育的・実践的意義と評価
― タイ国山村に於ける国際協力の事例

学習院大学経済学部教授
川嶋 辰彦

2005年度は、2ヶ年計画で執り行なう本研究の第1年目にあたる。従って、成果報告は2006年度研究の終了時に譲り、本概要では研究の目的を箇条書きし、同目的にそって初年度に進めた主な活動と、下記テーマ(1)について得られた知見の一部を略述する。

3-1 研究の目的
 本研究では、タイ国メーホンソン県内に立地する山岳少数民族居住僻村を研究対象に定め、各テーマを貫く縦糸に「NGOヴォランティア活動の概念」を据えて、以下の4テーマを考察する。

(1) 草の根的国際協力NGOヴォランティア活動プログラムである「GONGOVA(学習院海外協力研修プログラム)」の特質、並びにGONGOVAプログラム協力対象山村の実態
(2) ヴォランティア活動教育及び開発・環境教育に対して、GONGOVAプログラムが果たし得る役割り
(3) 協力対象地域の生活環境改善に対して、GONGOVAプログラムが寄与し得る可能性
(4) 「教育的・実践的両面で役立つ草の根国際協力ヴォランティア活動」の、在るべき姿に対する提言
〔備考〕初年度には、上記(1)、(2)、及び(3)の一部に関連する活動を主として行なった。
3-2 初年度に行なった活動
(1)2005年8月、12月、2006年1月(タイに於いて)

研究代表者及び共同研究者の計2名は、タイ国メーホンソン県内の白カレン族居住山村(バンフエイゲオボン村)及び赤カレン族居住山村(バンフエイチャンレク村)に於いて、フィールドワーク・スタディを執り行ない、上記テーマ(1)、(2)及び(3)に関連する調査研究を進めた。特に(3)との関連では、GONGOVAプログラムが現在企画立案中の「斬新なアプローチに基づく環境緑化プログラム」の導入が、山村経済の発展及び森林資源の再生に及ぼす貢献と実行可能性を考察・検討した。
(2)2005年9〜11月(タイ、及び我が国に於いて)

研究代表者と全共同研究者の間で、テーマ(2)に関する意見交換を個別に夫々数回に亙り試みた。
(3)2006年2〜3月(タイに於いて)

研究代表者は、バンフエイゲオボン村で実施されたGONGOVA2006(第十回学習院海外協力研修プログラム)に携わり、この機会を活用して、テーマ(2)及び(3)に関する考察を一層進めるとともに、研究代表者及び共同研究者の計3名はミニ・ワークショップを開催し、我が国及びタイ国の青年達並びに現地NGO関係者等と、「途上国内途上地域 (underprivileged regions in developing countries)を対象とするヴォランティア活動の教育的・実践的意義」をめぐり、意見を交換した。
(4)2006年4〜7月(我が国、タイ、及びオーストラリアに於いて)

研究代表者及び各共同研究者は、下記事項に関する考察を更に進めた。
[1] バンフエイケオボン村及びその周辺地域の生活環境及び自然環境の改善に役立つ、「GONGOVAプログラム」の在るべき姿
[2] GONGOVAとは異なる他の「草の根的国際協力NGO」によって、メーホンソン地域で取り組まれているヴォランティア活動の実態
3-3 得られた知見(部分):バンフエイゲオボン村(GONGOVAプログラムによる最近の主な協力対象山村)の特性
メーホンソン県北東部ムアン郡内の、ミャンマー国境沿いに位置するカレン族居住山村フエイゲオ村は、以下の3集落(以後、これらの集落を夫々「村」と呼ぶ)によって構成される。即ち、(1)バンフエイチャンレック(赤カレン族〈カヤー或いはカレンニ〉居住村落)、(2)バンフエイゲオボン(白カレン族〈スゴー・カレン〉居住村落)、及び(3)バンフエイゲオラン(白カレン族)。
概況 バンフエイゲオボン村の総人口は128人(内、17人の子女が教育のために、また11人の16歳以上の村人が出稼ぎのために村外で生活)、戸数は29世帯(内、7世帯が出稼ぎに依存する生計を営む)を数える。全住民がキリスト教(プロテスタント)に帰依しており、仏教的精霊信仰が主流をなすカレン族共同体で一般に行なわれている祭祀儀礼は見られない。
社会構造 婚姻形態の特質として、母方居住性が強い。例えば結婚後に、新郎新婦は数ヶ月間から一年間(時に数年間を越える場合もある)、妻側の家庭に居住する。
土地利用 熱帯雨林の山面を循環耕作型焼畑農業のために使用する割合は、上記3村落の中で最も低い。他方、水稲耕作は3村落中最も盛んである。また同村の場合、灌漑水田で栽培される換金性作物の種類は比較的多く(ダイズ、ニンニク、ゴマ、トウガラシ、トウモロコシ等)、雨季・乾季を問わず通年栽培が広く試みられている。

(敬称略)

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